アブストラクト(19巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 選択的冠動脈造影を応用しての心筋スキャニング-実験的研究と臨床応用について-
Subtitle : 原著
Authors : 遠藤真弘, 榊原仟
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 19
Number : 10
Page : 998-1008
Year/Month : 1971 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 「第1章 緒言」 心臓のスキャニングは三つに大別される. すなわち(1)心縦隔スキャニング(心プールスキャンニング). (2)心動態シンチグラフイー. (3)心筋スキャニングに分けられる. 心縦隔スキャニングは131I-人血清アルブミン(RISA)を静注し, 心臓内腔, 大血管内腔の血液プールを描血するもので, 心嚢液貯瘤と心拡大の鑑別や大動脈瘤の診断2)~4)に用いられ, ある程度確立されてきた診断法である. 心動態シンチグラムはRISAの代わりに超短半減期の99mTc, 113mInなどを大量に投与し, これをシンチカメラによつて, 刻々とその情報を動態検査する方法であり, 近年, 急速に進歩をとげた5)~9). 一方, 心筋スキャニングは心筋硬塞の正確な部位および範囲を知るためにいくつかの方法が案出され行なわれてきた. 心筋スキヤンニングの歴史 Love10)らが正常心筋にくらべ虚血部心筋細胞内のK+が減少するのを利用し, K+と類似の性状をしめすRb+で測定を行なつた. この原理を応用して1962年Carr11)らは86Rbを犬の実験的心筋硬塞に応用し, 硬塞部を陰影欠損(cold scanning)として描出するのに成功した. しかしヒトには86Rbのエネルギー(1780KeV)が高かすぎるので不成功に終つた. ついでCarr12)らは203Hg-neohydrinが硬塞部に集積するのを利用し, 硬塞部が描出される“hot scanning”の方法を考案した. しかし硬塞部は血流が悪いという根本的理由から思う様に硬塞部へ集積しなかつた. ついでCarr13)は86Pbと同系列の131Csを静注し, ヒトで硬塞部のcold scanningに成功した. この方法は, 現在, 最も世界で広く用いられている. しかし131Csのエネルギーは29.4KeVと非常に低いため, 後壁の硬塞描出は成功していない. また, 前壁にしても, そのコントラストは著しく低い. ついでEvans14)は虚血部の脂肪酸代謝が高まつているのを利用し, 脂肪酸にラベルしたRIFA(radioiodinated fatly acid)を静注してhot scanningを行なつた. Malek(1967)15)は蛍光法で抗生物質のtetracyclineが虚血心筋に高濃度に蓄積するのを利用して, tetracyclinの分子に放射性ヨードをラベルして, hot scanningを行なつた. 以上のいずれの方法も正常心筋を虚血部心筋におけるイオン濃度の差および代謝の差を利用して行なうものなので, その差には限界があり良好なシンチグラムは得られていない. 著者は従来の方法とは異なり, 粒子状放射性医薬品(131I-Macroaggregated Albumin, 以後略して131I-MAA)をカテーテルにて, 直接, 冠動脈内に注入する方法を用いた16)17)18)19). この方法によれば核種は131Iを用いるので, エネルギーは364KeVであり, 心臓のように表在性でなく, 深い臓器にも用いられる. (虚血部/正常部)比およびバックグランドは従来の方法にくらべ, はるかに低く, 良好なシンチグラムと得ることに成功した. この方法にもちいる131I-MAAの粒子は10~50μ20)である. 毛細管は7~10μの大きさなので131I-MAAは毛細管に一時的なmicroembolizationを起こすが, 通常用いる量では全体の毛細管を塞栓する比率は非常に僅かである. 犬に131I-MAA混入の造影剤を冠動脈に注入し, 脈拍, 心電図のST segment.T波, 左室圧, 左房圧をモニターした. ヒトに通常, 用いる量の100倍である131I-MAA 1mg/kgを注入してコントロールに比べ, 変化がなかつた. 同様に臨床例にても心電図をモニターし同様な結果を得た. 以上の基礎的原理から臨床応用を試み良好な心筋スキャニングを得たので報告する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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