Abstract : |
「第1章 緒言」人工心肺装置の開発にともない直視下開心術は飛躍的な進歩をとげ, 今や短時間の開心術は広く一般に, しかも安全に行なえるようになった. しかし, 複雑心奇形や重症心不全を有する症例に対しては, さらに安全でかつ長時間の体外循環法が要求されるが, 現在広く臨床に使用されているDeBekey型ローラー型人工心による体外循環は無拍動流潅流に近い潅流方法であるので, 生体にとってはあくまで異常なものであり, 生理的状態にはほど遠く, 長時間体外循環を行なうにあたって生体に悪影響を与えることに対して異論がない. とくに, 体外循環後にみられる末梢循環不全1)2)や腎障害3)~6)などは, 血行力学的問題が多分に影響しているものと考えられる. 1955年Wesolowski7)は, 体外循環を行なうにあたって無拍動流潅流で3時間の体外循環を行なっても, 動脈圧および末梢血管抵抗は, ともに一定で安定し, 血液ガスおよびpHなどにも著変がなく, したがって, 末梢のvascular toneを体外循環中に維持するためには, 拍動流潅流は必要でないと報告して以来, 現在まで一応ローラー型人工心による無拍動流潅流が主流になってきた. |