Abstract : |
「1 緒言」心臓弁膜症の手術的療法は1947年Bailey1)およびHarken2)らの僧帽弁狭窄症に対する非直視下交連切開術の成功にはじまる. その後人工心肺の発達により, 直視下手術が可能, 安全となり, さらに人工弁の開発あるいは同種弁の研究により弁膜症に対する弁完全置換術は飛躍的に進歩した. 人工弁による完全置換術は1950年Campbell3)が実験的に犬において大動脈弁閉鎖不全を作成したあと合成樹脂で作った人工弁を挿入してその治療に成功したのが初めであろう. 臨床的応用は1951年Hufnagel4)が大動脈弁閉鎖不全症の患者の下行大動脈にプラスチックのball弁を挿入したのにはじまる. その後自然弁を模倣したleaflet弁5)~8)が考案され治療的にも用いられたが術後の血行動態は非常に改善されるにもかかわらず耐久性の面で劣るため十分な長期成績が得られなかった. 1960年3月Harken9), がHufnagelのball弁を改良した2重のCageからなるball弁(double caged ball valve)を大動脈弁輪に縫着していわゆるsubcoronary positionにおける完全置換術に成功し, さらに数ヵ月遅れてStarrら10)がNewmanのball弁11)を改良したさらに堅牢なStarr-Edwards ball valveを作成し, これによる僧帽弁の完全置換術に成功し, ここに人工弁の実用的な時代を迎えるに至った. |