Abstract : |
「I. 緒言」心内膜床欠損症(以下, ECDと略す)がPeacock1)によって, はじめて報告されたのは1846年のことであるが, いわゆる臨床に結びついたECDの解剖とその分類法が, WakaiとEdwards2)によって確立されたのが1950年代の後半であるから, そう遠い過去のことではない. 1960年代に入ってからは, 診断と手術療法に必要とされる発生学上のまた解剖学上の特徴が十分に理解されて, ECDの手術成績も急激に向上したと云える. その大きな理由としては, 心臓外科全般における体外循環の進歩があげられるが, ECDの手術において, 重篤な合併症とされている術後の完全房室ブロックや, 僧帽弁および三尖弁の閉鎖不全症を未然に防ぐ, 手術術式の改善がなされてきたためと考えられる. しかし, ほぼ確立されたかに思える手術技術の点においても, Grade I, Grade IIの不完全型3)では, いまだに亀裂の処理や, 刺激伝導系の避け方に問題を残している上, 心室中隔欠損の処理を必要とするGrade III(完全型)では, 現在なお, 治療成績が悪く, 手術療法が今後の大きな課題とされている. |