Abstract : |
「I 緒言」近年血管外科の進歩はめざましく, とくに優秀な代用血管の開発により大動脈の切除, 置換は容易となり胸部大動脈瘤に対する手術例も次第に増加している. しかし胸部大動脈の完全遮断および置換には手術手技上種々の問題がある. 下行大動脈の手術は弓部, 上行大動脈に比べ比較的容易でかなり良好な成績が得られるようになったが, 他臓器の手術に比べるとなお危険が大で死亡率も高い. これは下行大動脈の完全遮断では中枢側の心への影響, 末梢重要臓器の虚血性傷害, とくに術後に頻発する腎不全, 脊髄血行不全による対麻痺, また遮断解除直後におこるDeclamping shockなど重篤な合併症をおこしやすく, なお未解決な点も多いためである. これらの問題解決のため下行大動脈手術の補助手段として, 現在まで低体温法1)~3), 脳脊髄液吸引法4)~6), 左心バイパス法7)~11), External Bypass法12)~15), Internal Bypass法16)17), 電気心細動法18)19)など各種のものが行なわれてきたが, いずれも一長一短あり, いまだ確立された方法とはいえない. |