Abstract : |
「第1章 緒言」膜型人工肺を用いた体外循環の研究は近年急速な発展をとげ, 現在すでにLande-Edwards型, Bramson型の如く臨床使用される段階に入りつつある. 膜型人工肺は, 従来広く用いられている気泡型, 円板型人工肺に較べ, 酸素と血液が直接々触しないため, 血液成分の物理的破壊(溶血, 血清蛋白変性, 赤血球表面の変化, 脂肪球形成, 血小板の減少など)が少なく, より生理的であり, 人工肺の完成型と考えられる. 将来, 膜型人工肺が, 従来用いられている人工肺に代るものとして使用されることは明らかであるが, 酸素加能力, すなわち膜の材質, 構造などの面で, 未だ種々の問題点をかかえている, 膜型人工肺の臨床応用の適応としては(1)開心術時の完全体外循環(気泡型, 円板型人工肺などに代るものとして) (2)長時間の補助循環(心筋硬塞や術後の低心拍出量症候群および呼吸不全に対して) (3)臓器循環(心臓, 肝臓, 腎臓などの潅流保存を目的として)などが考えられるが, 著者は膜型人工肺の特性を生かす意味で, 現在の人工肺では不可能と思われる長時間の補助循環, あるいは臓器保存に用いられるべきと考え, とくに(1)肺硝子様膜症, 火傷などによる呼吸不全, (2)重症先天性心疾患で低酸素発作を頻回に起したり, 肺合併症を起し, 死亡する危険のある小児の検査, 手術にいたるまでの低酸素状態, (3)術後の呼吸不全などで, 長期挿管, 人工呼吸器の使用は感染, 抜去困難などの問題があり, 必ずしも望ましくない. |