アブストラクト(20巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 閉塞性動脈硬化症によるSubclavian Steal Syndromeの治療経験
Subtitle : 原著
Authors : 砂田輝武1), 勝村達喜1), 平井淳一1), 前田肇1), 河島浩二1), 絹川信彦1), 星合清輝1), 安原正雄1), 伊藤保憲1), 戸田完治1), 松浦久明1), 高橋俊二郎1), 大庭治1), 古元嘉昭2)
Authors(kana) :
Organization : 1)岡山大学医学部第2外科教室, 2)岡山大学医学部三朝分院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 20
Number : 11
Page : 847-857
Year/Month : 1972 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 鎖骨下動脈および腕頭動脈起始部より椎骨動脈起始部までの間に生じた狭窄ないし閉塞を本体とし, 脳および患側上肢の虚血症状を呈するいわゆるSubclavian Steal Syndromeは欧米においてはすでに170例に余る報告があるが, 本邦においてはいまだに数少なく, しかもその殆んどは大動脈炎症候群に随伴したものである. われわれは最近閉塞性動脈硬化症による本症候群2例を経験し, 外科的に治癒せしめ得たので報告し, 若干の文献的考察を試みる. 症例1は54才の男子で, 入院3ヵ月前より前胸部圧迫感および左上肢の鈍痛を覚え, 某医に左橈骨動脈の拍動の触れないことを指摘されて入院した. 入院時左肘動脈より末梢の拍動を触れず, 上肢血圧は右140/94, 左100/80mmHgで左右に40mmHgの圧差があり, なお起立時あるいは左方に向けた顔を正面に向けると眩暈発作がある. 逆行性大動脈造影で左鎖骨下動脈起始部より左椎骨動脈分岐部までの間に閉塞があり, かつSubclavian Steal現象を証明し得た. 左鎖骨下動脈の血栓内膜摘除術を施行したところ術後1日目より左橈・尺骨動脈ともによく触れるようになり経過良好で眩量も消失した. 症例2は45才の男子で, 入院2ヵ月前に誘因なく意識消失発作があり, 某医にて右橈骨動脈の拍動が触れないことを指摘された. 急に頭部を挙上する際に眩暈発作があるため当科に紹介された. 入院時, 右頚動脈拍動微弱で右鎖骨上窩に第4度の収縮期雑音があり, 上肢血圧は右120/75, 左150/84mmHg, 眼圧右52/32, 左92/57mmHgで, いずれも左右差がある. 逆行性大動脈造影で, 腕頭動脈起始部に著明な狭窄があり, また狭窄後部拡張も認められた. 腕頭動脈の血栓内膜摘除術を施行したところ, 術直後より右橈骨動脈拍動は良好となり, また眩暈発作なども消失した. 以上2例はいずれも閉塞性動脈硬化症に起因するものであり, 本邦においても上肢の閉塞性動脈硬化症は決して稀でないといえる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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