アブストラクト(20巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 低体温開心術における酸塩基平衡
Subtitle : 原著
Authors : 内山卓也, 新津勝宏
Authors(kana) :
Organization : 岩手医大第3外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 20
Number : 11
Page : 858-869
Year/Month : 1972 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 単純超低体温法による開心術に際し, 術中術後の動脈血の酸塩基平衡の変動を追求し, 体液異常をアルカリ化剤で補正せず自然経過をみた場合, どのような変動をとるかを知るためにこの研究を行なった. 対象は当科で低体温開心術を行なったASD7例, VSD14例, TF11例, 計32症例である. 検体採取は麻酔開始時から, 術後3日まで経過を追って行なった. 血液ガスの測定は, Astrup装置を用い, 38℃で測定し, 代謝性因子にはBEを用い, 呼吸性因子にはPCO2を用いて検討した. 低体温開心術中のBEの変化は, 冷却完了, 血流遮断完了まで低下を続け, 最後に到達した代謝酸の蓄積度は, -15~-20mEq/lと血流遮断時間の長いものほど高度であった. 加温過程および術後経過においてBEの回復は術後3時間までに急激に進行し, 術後6時間にはさらに回復がすすみ, 血流遮断時間の短いものほど回復が早かった. ASDでは1日目に正常に復するものが多く, VSDでは2日目に大多数が回復し, TFの回復には3日を要した. PCO2の変動は, 症例毎の呼吸管理の影響の差が大きく個体差が著しかった. 手術前から冷却完了までは全症例ともPCO2は減少し, 血流遮断解除後には各症例ともPCO2の増加が認められた. 加温過程においても個体差が大きかったが, 自然呼吸にしてからは, 術後3時間, 6時間と時間の経過とともにPCO2の正常化がみられた. その後はASDではPCO2値の変化は少く, VSDでは2日後まで低値をとるものが多く, TFでは3日後まで低値を示すものが多かった. そのためpHはアルカロージスに傾いている. 以上のことから, 低体温, 血流遮断により高度の代謝性アチドージス, 呼吸性アチドーシスが発生するが, 血流再開, 復温により呼吸性及び代謝性アチドーシスは回復に向い, 重症例, 血流遮断時間の長い例ほど回復はおくれるが, アルカリ化剤による体液異常の補正を行なわなくとも完全に回復した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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