アブストラクト(20巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 選択的冠動脈造影時における心電図変化およびその造影所見と左室機能との関係
Subtitle : 原著
Authors : 山崎昭, 宮本忍
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 20
Number : 12
Page : 909-924
Year/Month : 1972 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 動脈硬化性冠動脈疾患にもとづく虚血性心疾患にたいする外科療法の歩みは心臓外科の他の領域の著しい進歩にくらべてきわめて遅々たるものであったが, 最近アメリカにおいて直接血行再建術である上行大動脈-冠動脈バイパス法が開発されるや, その重要性が認められ, 急速にその普及をみている. このような外科療法の普及には, Sonesにより開拓された選択的冠動脈造影法が大きく寄与していると考えられる. この選択的冠動脈造影法が冠循環にたいしていかなる影響を及ぼすかについて, これを心電図上から分析を試みた結果, 造影時に一致して, R-R間隔の延長, STの変化, およびT波の変化を過半数に認め, 著しいT波の変化を認めた. また, 右冠動脈優勢群では心拍数60/分以下の徐脈になる傾向が強く, とくに右冠動脈主幹部の高度の狭窄, あるいは閉塞を示している場合は徐脈になる傾向がある. P波の変化は右冠動脈優勢群での右冠動脈造影時に強く認められたが, これに反して脚ブロックは左冠動脈優勢群での左冠動脈造影時に増加する傾向を示した. R-R間隔の延長は, 右冠動脈優勢群での右冠動脈造影時において回復時間の遅延が著しかった. しかし, これらの心電図上の変化は一過性の変化であり, 被検者にたいして重大な影響はなかった. さらに冠動脈外科療法の実施にあたり, 重要である左室機能と冠動脈造影所見との関係を分析してみると, 選択的冠動脈造影上, 正常像を示した群にくらべて, 異常像を示した群では, 左室機能障害, とくに左室終末拡張期圧, および左室最大容量の増加を示し, さらに左室機能低下例では肺動脈圧の上昇がみられた. また, 冠動脈主要三枝(右冠動脈, 左前下行枝, 回旋枝)の病変程度と左室機能障害との関係をみると, 二枝病変群では左室機能障害の程度は軽度であるのに反し, 三枝病変群では, その低下が著明であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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