アブストラクト(20巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 切除適応限界と思われる食道癌症例の手術経験 ―照射による食道瘻形成症例および照射後再狭窄症例の検討―
Subtitle : 原著
Authors : 渡辺寛*1, 唐沢和夫*1, 岡田慶夫*1, 赤嶺安貞*1, 李思元*1, 森田晧三*2, 筧正兄*2
Authors(kana) :
Organization : *1愛知県がんセンター病院外科第2部, *2愛知県がんセンター病院放射線治療部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 20
Number : 12
Page : 925-934
Year/Month : 1972 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 進行食道癌の中でも, 切除適応限界と見なされている照射中瘻孔形成例, 根治照射後瘻孔形成例ならびに根治照射後再狭窄例等についての治療法について報告した. 従来までこれらの症例に対して積極的切除を試みる報告は少なく, 頚部食道瘻, 胃瘻ならびにbypass手術等の姑息手術に終る場合が多かった. われわれは瘻孔形成例では瘻孔の大きさと瘻孔の食道壁の発生部位(左か, 右か)等を充分検討し, 瘻孔が大きい場合はEi, Imの下部(気管分岐部にかからないもの)の食道癌では救急的に切除を施行した. 瘻孔が小さい場合は, 一回照射量を少なめとして根治照射を続行した後切除を行った. Iuの症例は, 胃の内容物の瘻孔への逆流防止策を加味した有茎右結腸によるbypass手術を先行し, 次いで切除を行った. この瘻孔への逆流防止策としては腹部食道を胃底部にてくるんで狭窄させる“Embracing method”なる新しい術式を試み好結果を得た. 根治照射後出狭窄例でも全て再発による狭窄と考えず, 照射前の食道造影で小さい癌であるもの, そして狭窄時の食道造影で狭窄上部の食道壁が平坦で左右対称の場合には積極的に切除を行い根治手術に成功した. 但し, Iuの場合は気管への影響を考えbypass手術を優先する方が良いという考えに達した. これらの症例の臨床病理学的検索の結果, 約半数に治癒手術が行なわれた成績が得られ, 積極的切除例が有意義であったことが判明した. これらの症例の転帰を検討するに, 切除8例中3例が3年以上の長期生存となり, 毎日快適な生活を送っている. また8例中3例は非癌死であり, 今後の術後管理や術式の検討によっては充分長期生存し得る症例であったと云える. 即ち, これらの従来切除適応限界症例に対しても積極的治療の綿密な計画を立て, 積極的で慎重な外科治療を行うことは極めて有意義なことと考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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