アブストラクト(21巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大量稀釈体外循環に関する実験的ならびに臨床的研究(とくに50%稀釈群について)
Subtitle : 原著
Authors : 笹尚, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 2
Page : 101-137
Year/Month : 1973 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 最近の心臓外科の著しい進歩にともない, 人工心肺に使用する新鮮血液の入手困難や, 大量の同種血液使用による種々の副作用が問題となって来た. 今度, 大量稀釈体外循環の研究の一環として, 24~25℃の低体温を併用し, 50%稀釈体外循環を雑種成犬を用いて行ない, 主に酸塩基平衡の面より検討を加えた. 完全体外循環時間30分潅流群(5頭), 60分潅流群(6頭), 90分潅流群(5頭), および120分潅流群(5頭)の4群にわけ, 15分ごとにBase Excess値を測定し, 7%重曹水で経時的に補正し潅流した. 結果は本法では完全潅流時間30分は勿論, 完全潅流時間60分および90分でも殆んど問題なく安全に行ないうる方法であることを知ったが, 完全潅流時間が2時間におよぶと, 代謝性アシドーシスの回復もかなり遅延し, かつ不充分であった. 次に比較的短時間で終る臨床例3例に30℃前後の軽度低体温を併用し使用した. 症例はV.S.D. 2例, M.S. 1例であった. 結果は良好な経過をとり, 10~20%稀釈群と殆んど変らず問題はなかった. ただ潅流中の静脈血酸素飽和度が50%以下となったこと, 乳酸値およびExcess lactate値の増加などより組織のHypoxiaがうかがわれた. したがってより長時間の潅流を行なう際には, 中等度低体温を併用した方が, より安全と思われた. 以上, 実験的および臨床的研究より考え, 50%稀釈体外循環法は, 低体温併用と重曹による補正により, 安全に行ないうる方法であり血液節減の意味からも, その臨床上の意義は大きいものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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