アブストラクト(21巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 生物肺による長時間体外循環に関する実験的研究 ―主としてoxygenatorとしての生物肺の機能的限界について―
Subtitle : 原著
Authors : 久保田宏, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 2
Page : 138-155
Year/Month : 1973 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年, 一過性の重篤な呼吸不全および循環不全に対して, 積極的に長時間体外循環による補助が行なわれるようになってきた. 短時間ならばmechanical oxygenatorでもよいが, 長時間の体外循環では人工肺が血液要素にあたえる障害が大きく, 重大な合併症の発生が予想される. 人工心肺研究の初期に体外循環の酸素化装置として同種および異種の肺が研究され, 酸素化能はよくしかも血液にあたえる障害は少ないと報告されている. そこで著者はこの生物肺を長時間の呼吸機能および心機能補助に使用することを目的として, deoxygenator犬を用いた生物肺潅流の実験的研究を行ないその適切な潅流方法や潅流許容時間について種々の検討を行なった. 目的とした潅流量を流し得た潅流許容時間は, 血流量(200ml/分)群では平均6時間45分, 中流量(500ml/分)群では5時間45分, 高流量(800ml/分)では3時間30分であった. また, 高流量群での副腎皮質ホルモンおよびPluronicF-68添加はその潅流許容時間を明らかに延長させた. 潅流時間の経過とともに, 生物肺流入圧, 血管抵抗, 気管内圧は上昇し, 肺コンプライアンスは減少するが, 高流量群ではその傾向が早期にみられた. 生物肺の肉眼的, 組織学的変化は, 肺うつ血および肺浮腫を中心とするものであるが, 潅流の経過とともに, 各指標の変化と平行的に増悪の傾向を示し, その発現時間は高流量群がもっとも早く, ついで中流量群, 低流量群の順であった. 溶血はきわめてすくなく, 最高を示した高流量群でも分時溶血量は0.4mg/dlにすぎず, 生物肺の溶血に及ぼす影響の少ないことが証明された. 生物肺の酸素化能は, 各群とも潅流許容時間内で, 流出血酸素飽和度は94~99%を維持し, 酸素分圧も100mmHg以上であった. また流出血炭酸ガス分圧は各群とも40mmHg以下であり, 以上のことから酸素化装置としての生物肺の能力は十分満足すべきものとの結論に達した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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