アブストラクト(21巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心房中隔二次口欠損症に関する臨床的研究(特にその病態ならびに根治手術後の長期回復過程を中心に)
Subtitle :
Authors : 小倉信幸, 武内敦郎
Authors(kana) :
Organization : 大阪医科大学第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 7
Page : 700-716
Year/Month : 1973 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年, 殆んどの先天性心疾患は, その根治術の術式も確立されすぐれた成績が得られている. なかでも, 心房中隔欠損症は手術も安全で広く普及しているが, 根治手術前後の病態変化の経時的追求についての報告は未だ十分でない. 著者は心房中隔二次口欠損症で根治手術を受けた1年6ヵ月以上の術後長期生存例140例について調査を行なつた. 観察期間の最長は9年6ヵ月である. 全例に術前心臓カテーテル検査を行ない, 体重測定, 心雑音記録, 心電図検査, 胸部レ線撮影等は, 術後一定期間後の診察時にくり返し実施した. 研究結果:(1)術前の体重は正常人体重の約80%の例が多いが, 術後1年以内にほぼ正常に改善される. (2)本症では自覚症状は軽く, 心雑音のみで発見される例が多いが, 心雑音強度と重症度との関連は少ない. 術後は心雑音と自覚症状がともに消失する. (3)CTRは症状の重さとよく一致し, 術後1年以内に正常範囲に減少する. 肺動脈突出度は術後1ヵ月から1年の間に減少傾向を示す. (4)右室肥大, 不完全右脚ブロック, 右軸偏位等の心電図所見の程度と術前の重症度との関係は少ないが, 術後における回復過程をよく反映し, 右室肥大像は2年以内に改善され, 脚ブロック像の改善には数年を要する. (5)術前に肺高血圧症を呈する例は成人に多く, 未成年例では短絡量と重症度との間に関係は少ない. 右室拡張終末圧は肺対体血流量比の大きい例でやや高い. その他, 肺動脈・右室間圧差や, 左房・右房間圧差と肺対体血流量比との関連は見出せなかつた. (6)以上から, 心房中隔二次口欠損症は自覚症状も比較的軽いため, 発見が遅れがちであるが, 右心室への負荷, および肺動脈血管抵抗の増加がみられる成年期までに, 根治手術を行なう事が, 長期回復過程の経過から考えて合理的であると判断された. (7)術前の所見は, 術後, 心収縮期雑音, 肺動脈第2音が早期に正常化し, 体重, 自覚症状は1年で改善するが, 右室の容量負荷の改善には2~数年を要する.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ