アブストラクト(21巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸腺腫の臨床病理学的研究
Subtitle :
Authors : 長岡豊, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 8
Page : 768-793
Year/Month : 1973 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸腺腫は重症筋無力症, その他特色ある合併症を伴うことが多く, 臨床的には良性経過をとるものと悪性経過をとるものとが区別されにもかかわらず, 腫瘍良・悪性の組織学的表現が充分とらえられていない特殊な腫瘍である. また多彩な組織像を呈しており, その組織分類にも定説がみられない. そこで著者は胸腺腫の組織型分類と腫瘍良・悪性の組織学的判定を目的として胸腺腫症例について臨床的観察と長期間の予後追跡を行なうとともに組織学的検討を行なつた. (1)自験33例の胸腺腫症例中, 11例の重症筋無力症, 2例のpure red cell aplasia, 1例の好酸球性類白血病反応合併症例を見出した. (2)これら胸腺腫33例の予後は死亡10例で, うち6例が腫瘍死, 残り4例が合併症に関係する死亡であつた. また術後再発は3例に認められ2例は局所再発, 1例は胸腔内implantationと考えられた. (3)胸腺腫組織型分類として上皮細胞型とリンパ球型に2大別し, 上皮細胞型を多角形, 紡錘形, ゼミノーム様細胞型の3型に細分する方法が妥当である. この分類にしたがえば, 上皮細胞型31例, うち多角形細胞型23例, 紡錘形細胞型6例, ゼミノーム様細胞型2例, リンパ球型2例と分類される. (4)胸腺腫の良・悪性判定の指標に用いられる肉眼的浸潤所見, 組織学的所見としての細胞異型性, 核分裂像, 被膜・血管への浸潤像は悪性度を反映するが, これらで悪性像が認められないものの中に悪性経過をとるものがある. (5)上皮細胞型胸腺腫の悪性度判定の一手段としてL/E比(リンパ球数/上皮細胞数)が有用である. すなわち肉眼的浸潤所見, 組織学的被膜浸, 核分裂像, 細胞異型性, 脈管浸潤所見などの有無によりそれぞれ2群に分類したL/E比は肉眼的浸潤所見を除き, それぞれの有所見群にL/E比の有意の低下を認めた. (6)同一症例につき時点を異にして組織像を検索した3例中, 1例は不変, 2例は良性所見から悪性所見への変化を認めた. (7)臨床的には外科的摘除と術後放射線治療を行なう事が現状では最善と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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