アブストラクト(21巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 結核性胸部大動脈瘤の治療経験とその臨床像に対する考察
Subtitle :
Authors : 砂田輝武*, 勝村達喜*, 木村穂積*, 林逸平*, 金子克也*, 安原正雄*, 戸田完治*, 山根正隆*, 高橋俊二郎*, 杉本誠起*, 大庭治*, 古元嘉昭**
Authors(kana) :
Organization : *岡山大学医学部第2外科, **岡山大学病院三朝分院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 9
Page : 823-831
Year/Month : 1973 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年血管外科の進歩と診断技術の向上, さらに大動脈瘤に対する一般の知識の向上により, 大動脈炎あるいは特殊な原因による大動脈瘤の報告例が増加しつつあり, 動脈瘤の成因が時代とともにその発生頻度にかなりの変遷があることは良くしられている. 動脈壁の炎症性変化に基づいて発生する動脈瘤では梅毒によるものがもつとも頻度が高く, 動脈硬化症とならんで動脈瘤の2大原因の1つとされている. しかし同じ特異性炎症の1つである結核による動脈瘤の発生はきわめて稀で, 欧米の文献上110例が報告されているにすぎず, しかも生前に診断しえたものは少なく, その大部分は剖検によつてはじめて明らかにされたものである. 一方本邦ではわずかに数例の報告があるにすぎず, そのうち手術を施行されたものは3例で, 腹部大動脈瘤2例, 胸部大動脈瘤1例で他はすべて剖検例である. 著者らは, 岡大第2外科で現在までに62例の胸部大動脈瘤を経験し, そのうち手術を施行したものは29例であるが, このうち結核性胸部大動脈瘤の興味ある1例の手術に成功したのでその概略を述べる. 症例は44才の女性で左滲出性肋膜炎および脊椎カリエスの既往がある. 1967年10月頃より発熱, 左背部痛を主訴とし内科に入院し左下肺野腫瘍として治療をうけていたが, 第10, 11胸椎体の破壊像と心陰影の左第4弓に重なる異常な二重陰影を指摘され1969年4月当科に入院. 逆行性大動脈造影の結果, 第10, 11胸椎の部に大動脈瘤の存在が認められ, 結核性大動脈瘤の診断の下に大動脈瘤切除, 代用血管移植術を施行した. 大動脈瘤は仮性大動脈瘤であつたが, 大動脈壁には定型的な結核性病変が認められた. 術後強力に抗結核療法を施行し退院したが3年経過した現在全く健康である. 本疾患はきわめて稀な疾患であり, その成因, 診断治療上にも種々の問題点がある. 早期発見と積極的手術が本疾患治療上不可欠の条件であるが, 本症の臨床像についての考察を加えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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