アブストラクト(21巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高気圧環境下体外循環に関する研究
Subtitle :
Authors : 高橋英世, 福慶逸郎, 高橋信次
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学大学院医学研究科外科系外科学(第1)専攻
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 9
Page : 832-848
Year/Month : 1973 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 高気圧環境下に高分圧酸素を投与しておこなう高気圧下手術は一部の重症青色症症例に対し有用とされるが, 従来の報告は高気圧環境下純酸素投与により延長された心血流遮断の許容時間内に手術操作を完了しようとするものが多く, さらに複雑な心奇型の修復にまで高気圧下開心術の適応を拡大するためには補助手段としての体外循環法の確立が不可欠である. また高気圧環境下では血液への酸素加効率が向上することから従来よりも一層簡略小型化された装置による低流量潅流でも大気圧下に通常の装置を使用すると同等の生理的な潅流条件を維持できることが推論される. 本研究においては高気圧環境下におこなわれる常温低流量潅流の可能性と安全性を確認すること, およびそのための人工心肺装置を開発することなどを目的とした. 高気圧環境下では火災防止の見地から電気による駆動・制御系は使用できず, 一方で高気圧室内では安全な駆動用流体としての圧縮空気が容易にえられるところから著者は完全に流体(圧縮空気および液体)により駆動・制御される新しい人工心肺装置を開発使用した. この装置は空気・液体駆動の拍動型血液ポンプを中心とするもので, 高気圧室内での使用に際し要求される安全性確保のための条件を完全に満足するものである. この装置により2絶対気圧の高気圧環境下に約60分間の体外循環をおこない, この間に連続的に血液流量を高流量(80~100ml/kg/min)から低流量(40~60ml/kg/min)へと変化させ血液ガス動態の変動を指標として高気圧環境下体外循環の適正条件をもとめた. その結果, 2絶対気圧下の高流量潅流により生理的範囲から逸脱した血液ガス動態は低流量潅流とすることにより生理的範囲内へ復帰することが静脈血酸素飽和度, 動静脈血酸素含有量較差などの検討から確認された. 同時に記録した脳波により高気圧環境下低流量潅流は, 中枢神経系の機能維持に悪影響をあたえないことが証明された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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