Authors : |
高場利博*, 太田宏*, 前田洋*, 李雅弘*, 川田忠典*, 尾上保夫*, 岩堀嘉和*, 金子和義*, 松下功*, 藤井浩一*, 森本和大*, 菅波郁**, 本田善九郎**, 古川俊隆**, 石井淳一* |
Abstract : |
外傷性臓器損傷の外科的治療は診断法の進歩とともに飛躍的に進歩し, 腹部臓器においては殆んどは手術によつて救命されるようになつた. しかし胸部外傷, とくに心臓外傷に関しては心筋挫傷から弁損傷, 心臓破裂までその程度の範囲は広く, 放置すれば死に至る症例も多いが, 受傷直後の救急処置により, その重篤な時期をのりこえれば手術により救命しうる症例もある. 胸部や上腹部の穿通性外傷であれば心外傷を念頭におくのはそれほどむつかしいものではないが, 非穿通性の場合は, しばしば心臓外傷を見すごすごとがある. 心外傷をひきおこすような外力は強力であつて, 他の頭部, 胸部, 腹部外傷を合併していることが多く, そのためそれらに由来する症状やその処置に注意をうばわれ, 心臓の急性悪化が治療に先行する場合があり, 一時的には小康を得ても数時間から数日で死亡するケースが多い. しかし中隔, 弁などの心内損傷であれば, 受傷直後のショックを切りぬければ, かなり慢性に経過する症例もみられ, 手術により根治することが可能である. |