Abstract : |
近年, 内胸動脈心筋内移植術のトンネル作製によって心筋が損傷し, これが術後の心機能を著しく低下させることが問題になっている. 直接法の発達した現在でも, 内胸動脈心筋内移植術の適応は減少することはない. 心機能低下が最小で, 最大の効果を発揮するトンネル作製法の開発が必要となってきた. この目的で雑種成犬70頭を用い実験的研究を行なった. 従来のように鉗子を用いてトンネルを作った群, 円筒形の金属管を回転させ心筋切除を行なった群, 錐状のもので心筋を切除しなかった群の3群の方法で, 浅いトンネル(心筋表面から1/3以内の部位)と深いトンネル(心筋内膜側から1/3)を作製した. 以上の合計6群について心機能(左室圧, 左室圧dp/dt, 心拍出量, 表面心筋収縮力)を測定した. さらに植込んだ血管周囲の圧勾配(植込み血管内圧と心筋内圧)を測定した. この結果からいかなるトンネル作製が最適かを検討した. 実験結果から (1)鉗子使用群では心機能低下が最大であった. 心筋切除群, 心筋非切除群では心機能はよく保たれていた. (2)浅いトンネルが深いトンネルに比べて心機能低下が大きい. (3)心筋非切除群は内胸動脈圧よりも植込み血管圧が低くトンネルが狭すぎた. (4)植込み血管周囲の圧勾配は浅いトンネルでは大きく, 深いトンネルでは小さかった. 以上の結果からつぎの結論を得た. 内胸動脈心筋内移植術のトンネル作製は, 円筒形のものを回転させて心筋を切除するように作るのが最適である. トンネルの深さは, 浅いときには心機能低下が大きく, 深すぎれば圧勾配が少ない. したがって中央部分に作製すべきである. |