Authors : |
山下淳平*1, 岡村宕*1, 中村常太郎*1, 相楽恒俊*1, 瀬崎登志彰*1, 小林晴夫*1, 細井靖夫*1, 遠藤毅*1, 加部恒雄*1, 斎藤学*1, 松本博雄*1, 勝田貞夫*1, 石川惟愛*2 |
Abstract : |
単純超低体温法による僧帽弁狭窄症, とくに左房内血栓の合併例に対する手術法および患者管理法ならびに術後合併症での問題点について, われわれの成績を中心に考察を加えて報告した. 僧帽弁狭窄例は14例で, 術前に心房細動が10例に認められ中4例に栓塞症の既往があり, また中3例に左房内血栓の合併を認めた. 手術法として, 閉鎖式か, 直視下手術か, いずれの方法を選ぶかは症例にもよるが, これによって手術成績が左右され, 手術適応の決定にも重大な意味をもつ. 器質化した陳旧性血栓のある例でも当然直視下手術が必要だが, 肺静脈開口部や肺静脈内に亘る新しい血栓の存在する例では, とくに直視下手術の絶対的適応がある. また弁口狭窄が高度で, しかも弁自体の石灰沈着と肥厚の高度例では, 交通切開と弁の肥厚組織の切除をともに行ない, 弁に可動性を与えねばならない. かかる意味からも本症の治療として直視下手術が再認識されるべきと考える. われわれの患者管理法では, 胸水貯溜を伴う重篤な心不全例でも, 円滑な低温導入ができ体温の下降とともに状態を好転でき, 生体のRiskを軽減し所期の目的を達し得た. 術後は人工冬眠カクテル投与による積極的な人工冬眠管理により, 術後の代謝亢進を抑制し, 術後の危険期を円滑に経過させ得た. 左房内血栓の合併についてみると, 陳旧性血栓例では, 従来同様に慎重に摘出し, よく左房内を洗滌して狭窄部の交連切開するだけで良好な経過が期待できるが, 胸水貯溜を術前に認め, 急速に新しい血栓形成が起り, とくに右肺静脈開口部を塞ぐように大量にあった例(41才女, 46才男)にみるごとく, 術後経過中に再び血液凝固機転の短縮を来し, 左房内血栓, 胸水貯溜を再度来すものがあることは注目すべき重大な問題で, 胸水貯溜を見た時は直ちに穿刺排液とともに抗凝固剤, 副腎皮質ホルモンの投与が必要と考える. |