アブストラクト(21巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺高血圧症を伴う先天性心疾患の外科的治療に関する研究 手術による血行動態の推移を中心として
Subtitle : 原著
Authors : 鳥山皓, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 10
Page : 943-968
Year/Month : 1973 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和41年4月より昭和45年12月までの間に神戸大学第2外科および兵庫県立こども病院で根治手術が行なわれた肺高血圧症(Pp/Ps 0.5以上)を伴う先天性心疾患71例(ASD7例, VSD39例, PDA20例, PDA+VSD5例)について, 術前および術後1~12ヵ月の間に心カテーテル検査を中心とした諸検査を実施し, 手術による血行動態の推移を追求しさらにEisenmenger化した症例10例についても同様の検討を加え, 次の結論を得た. 1)肺高血圧症の発生頻度はASD5.4%, VSD20%, PDA22.9%, PDA+VSD83.3%であった. 2)手術死亡率はASD0%, VSD25.6%, PDA10%, PDA+VSD20%であった. VSDでは, Pp/Ps 0.75以上の症例の死亡率は31.5%で, 右心不全, 心筋障害や高度の肺血管病変を有する症例の手術予後が悪く, 主な死因はLOSと呼吸障害であり, これらの発生と肺高血圧症との間には密接な相関が推測された. PDAでは血行動態的重症度と手術死亡との間には殆んど関連がみられなかった. 3)根治手術後の肺動脈圧およびPp/Psは, ASD, VSD, PDAともに, 1ヵ月で著明に下降したがなお正常値よりは高かかった. しかしその後6~12ヵ月の間に, 緩慢であるがさらに下降した. 4)根治手術後の肺血管抵抗(Rp/Rs)は, ASD, VSD, PDAともに, 術後1ヵ月では上昇と下降が相半ばし, 上昇を示した症例の術前のはQp/Qs 2.5以上であった. 肺血管抵抗は術後6~12ヵ月の間に漸次下降した. 5)肺動脈楔入圧は, VSDでは術後早期に正常化したが, ASDでは術後に上昇した症例が多く, 肺静脈側への病変の波及が推測された. 6)PDA+VSDは高度のPHを伴っており, PDA, VSD, PDA+VSD3者を鑑別することは重要と考えられた. 7)肺高血圧症を伴う先天性心疾患の手術適応を規制するものはRp/Rsである. 手術効果を考慮に入れると, ASD, VSDはRp/RS 0.75が限界と考えられるが, 手術適応決定に当っては, 短絡の程度, 右心不全, 心筋障害などの評価を行なうことも大切と考えられる. 8)Eisenmenger化したかどうかの診断は, 心カテーテル検査, 心電図, 胸部レ線写真, 臨床所見, さらに肺および全身線シンチグラムなどから, 総合的にされるべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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