アブストラクト(21巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺保存の実験的研究
Subtitle :
Authors : 渡久地政夫, 篠井金吾, 早田義博
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 11
Page : 1023-1035
Year/Month : 1973 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺移植臨床例は, 腎, 心移植に比して少なく, 世界で僅か32例行なわれたにすぎない. この僅少な原因としては, 移植免疫学的問題を含めて多くの点があげられているが, その1つに移植肺の入手法に関連して, 肺の保存がある. 著者は, 肺保存時間の延長をはかり臨床応用の可否を究明すべく, 犬の肺を用いて肺保存の実験的研究を行なつた. 阻血肝保存実験としては, 屍体肺の移植に好都合な肺保存条件を得るべく, 開胸後, 一側肺の肺動静脈および気管支動脈の遮断後, ヘパリン投与, 阻血肺の換気の維持, 低温保存を行なつたものと行なわなかつたものについて, 3, 6時間阻血後, 肺動静脈血Po2, Pco2較差の比較, 肺コンプライアンスおよび肺の組織学的変化の面でviabilityを調べた. その結果, 10℃の低温で肺の換気を行ないながら, 肺動静脈, 気管支動脈を遮断した群では, 6時間阻血後も, viabilityがよく保たれていることを認めた. 次に低温保存については, 4℃下に2~24時間保存し, 自家肺再移植による生着期間, 生着肺の動静脈血Po2, Pco2較差, および組織学的検索を行なつたが, 2時間保存では3週以上生存し, 保存肺の機能, 組織像ともほぼ正常であつた. さらに長期保存を目的とした氷点下保存実験では, 剔出肺をfreezer中で-2~-5℃で, 2~24時間保存後, 自家再移植すると, 4時間まではviabilityのあることを認めた. さらに保存時間を延長する目的で, deep hypothermiaとして, -80℃で種々の方法で3時間凍結保存を行なつた. 凍害防止剤として用いたDMSOは20%の濃度が保存に用いうる最高濃度であることを認めた. この場合の移植成績では, 5日間生存例は僅かで大部分は移植後1~2日間以内に肺出血あるいは肺壊死で死亡し, 現状では保存時間の延長がえられなかつた. 保存肺のviabilityの判定は自家肺再移植による生着の有無, および生着肺の機能など多くの面から決定すべきであることを認めた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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