アブストラクト(21巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁置換後の血行動態に関する臨床的研究
Subtitle :
Authors : 豊田紘生, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 11
Page : 1080-1092
Year/Month : 1973 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁弁膜症に対して人工弁置換術が施行された45例(僧帽弁狭窄症21例, 僧帽弁閉鎖不全症24例)について, 術前, 術中ならびに術後に心臓カテーテル法によつて血行動態を検索し, 以下の結論を得た. 1)僧帽弁狭窄症, 僧帽弁閉鎖不全症ともに, 人工弁置換後2ヵ月以内に, 肺毛細管圧はほぼ正常の上限にまで下降した. 肺動脈平均圧の下降は不十分で, とくに僧帽弁狭窄症ではなお高い値にとどまつている例がみられた. 心係数は弁置換後全例で増加を示した. 2)使用人工弁の弁口面積を患者の体表面積で除した, いわゆる補正弁口面積と, 人工弁置換後の心内圧との関連を検討したところ, 両者の間に相関が認められた. すなわち人工弁の補正弁口面積が大きいほど, 肺毛細管圧, 肺動脈平均圧は術後正常に近い値を示し, 運動負荷においても心内圧の上昇は軽微であつた. さらに補正弁口面積が2.0cm/m2以上の比較的大きい人工弁が植え込まれた症例では, 左房平均圧-左室拡張末期圧間の圧勾配が小で, ほぼ満足すべき弁口抵抗を示した. 3)手術台上において, 弁置換術が終了し血行動態がほぼ安定した時点において, 左房平均圧を測定したが, その値は術後2ヵ月目の肺毛細管圧と殆んど同じで, これと左室拡張末期圧との間の圧勾配は0~12mmHgであり, とくに補正弁口面積が2.0cm/m2以上の人工弁が用いられた症例では4mmHg以下であつた. ここでイソプロテレノールの負荷を行なつて心拍出量を増加せしめても, 左室拡張末期圧および左房平均圧はともに低下し, 人工弁口における拡張期圧勾配の増大はみられなかつた. 4)15例について術後1年以上にわたり, 血行動態の追求を行なつた. 肺毛細管圧は術後2ヵ月目とほぼ同じ値を示したが, これが20mmHg以上を示した3例では血栓塞栓症の合併が認められた. 肺動脈平均圧は僧帽弁狭窄症においては下降するのにやや長年月を要した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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