アブストラクト(21巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 表面冷却下低体温麻酔時の末梢循環動態に関する研究(第1編) ―末梢循環動態と体液循環動態―
Subtitle : 原著
Authors : 牧田俊彦, 橋本勇
Authors(kana) :
Organization : 京都府立医科大学第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 12
Page : 1103-1122
Year/Month : 1973 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 現在では開心術の補助手段として低体温法が利用されているものの, なお幾多の問題点が残されている. その問題点を末梢循環動態から検討して, 安全で確実な低体温法を確立するのが本論文の目的である. 著者は10%エーテル半閉鎖循環麻酔下に, 自律神経遮断剤を併用して, 雑種成犬30頭を用い, 表面冷却を行ない, 最低温20℃として, 後加温復温させ, その低体温過程の体液循環動態, 末梢循環動態および門脈循環動態を観察した. 低体温時の体液変動を検討すると, 冷却過程において, 循環血液量および細胞外液量は軽度減少をきたしたが, これは末梢血管系におけるPooling現象と解された. また低体温時の胸管リンパ流量は減少し, 心原性ショックの場合と類似した. 低体温時の平均動脈圧, 中心静脈圧および門脈圧は, ほぼ同一の変動を示して減少したが, これは心機態の低下により起こるのではなく, 静脈還流の減少に伴って, 2次的に心拍出量が低下することを意味した. 低体温時の心拍数の減少率は, 主要臓器の血流量の減少率とほぼ一致することから, 心拍数の減少率は冠血流量の減少率に相応するものと考えられた. 低体温時の血流分布をみると脳, 肝, 腹部などの主要臓器では比較的よく血流が維持されているのに反し, 腎や下肢では血流量の減少が著明であった. 低体温時の門脈循環動態は, 冷却過程においては, 肝内presinusoidのvasoconstrictionが起こり, 肝内シャントが開通して, 肝内血管床にPoolingが生じ, 加温過程においては, presinusoidの血管緊張は消失するか, postsinusoidのvasoconstrictionが起こり, 門脈系にうっ血が生ずると考えられた. 著者は低体温時の循環動態は, ショックの概念に相当し, 可逆性の変化である点より, Controlled Shockと考えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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