Abstract : |
循環動態の診断, 栄養輸液, ペースメーカーの普及により, 血管内留置カテーテルを使用する機会が増えている. これらのカテーテル材料は, 主としてテフロン, シリコンゴム, ポリエチレンなどであるが, 抗血液凝固性の点で, 十分満足できるものでなく, 48時間以上, 血管内に留置した場合には, 極めて高率にカテーテル周囲に血栓の附着がみられる. カテーテル血栓による静脈閉塞, 感染症, 肺塞栓などの合併症も, 時に経験される. Lecithinが血液の界面活性を増加させることを利用し, その前駆物質であるCytidine diphosphate choline(CDPcholine)を投与することにより, カテーテル血栓の防止が可能であるか否かについて, 犬計31頭を使用して, 実験的に検討した. テフロン製CVPカテーテルを, 犬の下大静脈内に2週間留置し, レ線造影, 剖検, および組織学的に, カテーテル血栓の形成状況を観察した. CDPコリン非投与群では全例(10/10)にカテーテル血栓形成がみられ, CDPコリン投与群(100mg/kg/day)では, 27%(3/11)に血栓形成がみられた. また, CDPコリン1週間投与後2週間放置群, および1週間放置後1週間投与群では, 100%(5/5および5/5)に血栓形成がみられた. これらの結果より, 5%の危険率で, CDPコリン投与群において, 血栓防止効果がみとめられた. 血栓防止の機序については, 尚, 検討中であるが, 血小板の粘着, 凝集能の変化と関連があることが, 推定されている. |