Abstract : |
食道癌の手術療法は, 麻酔法の発達, 術前照射の採用, 術後管理技術の向上などにより, 切除率, 手術死亡率の面で非常な進歩をとげた. さらに, 最近は診断技術の向上により早期食道癌の報告もなされ, その遠隔成績の向上が期待されるが, やはり進行癌を取り扱うことが多いというのが現状である. 著者は, 食道癌のリンパ節転移実態を病理組織学的に検索し, とくにリンパ節転移陽性例の実際の治療について検討した. 1. 胸部食道癌でも腹腔内リンパ節への転移の可能性は高く, また胸腔内リンパ節へは転移がなく腹腔内リンパ節にのみ転移がみとめられる症例がかなりあり, 胸部食道癌において, 腹腔内リンパ節廓清は基本的な手術手技といえる. 2. リンパ節転移の有無の判定については手術時の肉眼的判定は不正確で, 組織学的判定が重要である. またanthracosisが強度にあるリンパ節には, 癌転移はあまりみとめられず, anthracosisはある程度リンパ節転移判定の資料となりうる. 3. 術前照射群では転移リンパ節の変性像が, 第1群リンパ節にかなり高率にみられたが, 術前ブレオマイシン投与群では, 遠隔のリンパ節転移巣での変性発現率が高く, ブレオマイシンは全身療法として, そのリンパ節転移に対する効果が期待され, 転移陽性症例, さらには転移陰性症例でも脈管内侵襲陽性症例へのブレオマイシン術後投与も有用と思われる. |