アブストラクト(21巻5号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 上大静脈肺動脈吻合術の長期予後
Subtitle :
Authors : 中江純夫, 岩喬, 浅井康文, 安喰弘, 亀田義昭, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 21
Number : 5
Page : 530-537
Year/Month : 1973 / 5
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺血流量の減少せる諸種の青色症に対する寛解手術として上大静脈肺動脈吻合術が広く行なわれてきた. しかし, いまだその適応となる疾患は不明確で, かつ本手術後の長期予後に関する報告は少ない. 著者らは, 主として本手術後長期生存例について検討を加え, かつ長期予後を左右する要因について考察を試みた. すなわち, 昭和37年以降, 上大静脈肺動脈吻合術を施行した症例は29例で, うち8例(27.6%)は手術死亡である. 残り21例が今回の検討の対象となつた. これら21例を疾患別にみると, ファロー四徴症7例, エプシュタイン氏病3例, 肺動脈狭窄および心室中隔欠損を伴う大血管転移症5例, 三尖弁閉鎖症4例, 両大血管右室起始症1例および三尖弁狭窄および心房中隔欠損を合併せる右室発育不全症1例となる. 術後の平均経過観察期間は5年6ヵ月であり, 術後5年以上経過せる症例が13例を数える. 術後経過観察上, 赤血球数, ヘマトクリット値は最も外来での良い指標となり, 術後著名に改善されたこれらの値も, 2~3年頃より漸次増加の傾向にあり, チアノーゼなどの臨床症状とよく相関する. 長期観察期間中1例を失ない, またフアロー四徴症の2例(うち1例は根治手術, 他の1例は姑息手術施行)およびエプシュタイン氏病の2例(ともに根治手術後失なう)の計4例は再手術を要した. これら長期生存例の検討より, 長期予後を左右する要因として, 原疾患の重篤性は勿論であるが, その他肺動脈栓塞, 結紮せず放置せる奇静脈あるいわその他の副血行路の発達によるVenous Steal, 肺動脈末梢血管抵抗の増大など多様な原因による漸次進行せる肺血流量の減少が重要である. なお現時点において根治方法のない青色症は本法の適応と考えるが, 特に三尖弁閉鎖症は手術死亡もなく, 予後も良好であり, 今後とも本法の応用が有用と考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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