アブストラクト(22巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 幼児の気管端々吻合術の問題点-その手術限界に関する基礎的研究-
Subtitle :
Authors : 前田昌純, 古武弥宏, 谷靖彦, 姜臣国, 竹村政通, 中原数也, 門田康正, 正岡昭
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 1
Page : 1-15
Year/Month : 1974 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 幼小児の気管形成術の可能性は, Borrieの否定的な見解と臨床例の不足のために疑問視する者が多い. Borrieが否定する論拠は, (1)細い幼児気管の吻合は技術的に難しいこと. (2)切除可能範囲が幼若動物気管ではあまりにせまいこと. (3)術後吻合部の発育の様態が未知数であること. の3点に要約できる. 本論文は, 雑種小犬62匹, 対照群として成犬56匹を用いて以上の3点について検討を加えたものである. (1)端々吻合可能最小気管径:気管吻合の技術的な限界を決定するに先立つて, 反回神経の損傷, 気管粘膜縫合の不全, 吻合端支配動脈の損傷, 吻合気管の軸捻転, 吻合部に対する感染の影響を検討し, 適正な吻合の重要性を指摘した. 適正な吻合を行なう限り, 今回の実験では内径5mmの気管まで吻合が可能であつた. 実験小犬の気管径はEngelの気管成長曲線と対比すると, 人の新生児から3才幼児の気管径に相当した範囲に値が分散していた. (2)気管切除可能範囲切除限界を知るparameterとして, 吻合部張力としての表示法が最適であることを指摘した. 小犬では1000g張力以下では何の障害もなく生存し得た. 成犬の安全な張力上限は1750gで, 両者の比は0.57の値を示した. 吻合不全の形態をその発生機転に基づいて3型に分類した. (3)気管吻合部の成長:小犬時に端々吻合術を行ない成犬(生後8ヵ月)時に屠殺, 吻合部を検索した. 吻合部の外観, 組織像, metricalな成績の分析から吻合部は, 成長阻害を受けることが示された. metricalに吻合部の狭窄指数(R2)平均値は縦径76%, 横径72%で, 縦横径R2の積で計算した狭窄度平均値は58%, 炎症随伴例, 過度の吻合部張力例を除くとこの値は74%の値を示した. 臨床例に狭窄症状を呈した例はなかつた. 以上の結果から, 幼児期の気管形成術は成人に比べて一定の制限を受けるが可能と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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