Authors : |
北村惣一郎*, 川島康生*, 松田暉*, 中埜粛*, 高野久輝*, 団野迪昭*, 森護*, 森透*, 宮本巍***, 藤田毅*, 曲直部寿夫*, 小塚隆弘**, 佐藤健司**, 重松康** |
Abstract : |
単心室症15例に対し姑息的手術を施行した. すなわち肺高血圧症をともなつた1例に肺動脈絞扼術(PA banding)を, 肺動脈狭窄(PS)を合併する14例に対し, 5例の上大静脈-肺動脈吻合術(SVC-PA), 8例の体動脈-肺動脈吻合術(SA-PA), 1例のPS除去術を施行した. PA-bandingおよびPS除去術を行なつた1才未満の各1例とSA-PAの1例, SVC-PAの1例計4例を術後急性期に失ない, 手術死亡率は26.7%であつた. PA-bandingとPS除去術施行の各1例を除く13例には肺血流増加を目的としたシヤント手術を施行したので, これをSVC-PA群5例, SA-PA群8例に分け検討を加えた. シヤント手術症例での急性期死亡は2/13(15.4%), 遠隔死亡は2/11(18.2%)であり, 全死亡率は4/13(30.8%)であつた. 術後の成績は遠隔死亡例を含めSVC-PA群で著効2, 改善2, SA-PA群では著効2, 改善3, 不変(早期シヤント閉塞例)2であつた. 両群で9/13(69.2%)に著効および改善を認めたが, なお全例に軽~中等度のチアノーゼを認めている. 著者らの経験した1才以上の患児については, 手術死亡率, 臨床的効果などの上で両シヤント手術間に著明な差を認めなかつた. 術前後の資料の得られた両群4名づつの比較検討では術後のSaO2およびHctの術前値に対する上昇および下降率に両群間の差を認めなかつた. 一方心胸廓比(CTR)に関してはSVC-PA群の術前後の変化は極めて少ない(1.8%)のに対し, SA-PA群では平均12.5%と増加し, 後者では臨床的にも術後心不全をきたした症例を認めた. これはSVC-PAの方がSA-PAより血行動態的には優れているという理論的背景に基づいていると考えられる. したがつて根治困難な共通房室弁を有する単心室症例(1才以上), とくに術前心不全を有する症例に対してはSVC-PAが第一に考慮されるべきシヤント手術であろう. しかしSVC-PAを成功させる為には種々な生理的, 解剖学的問題が充分検討されねばならない. そこで著者らはその経験を検討するとともに, これに文献的考察を加えることにより, 肺動脈狭窄を伴う単心室症に対する姑息手術の方針を決定した. |