アブストラクト(22巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Phenoxybenzamineの体外循環への応用
Subtitle :
Authors : 坂内五郎*, 安斉徹男*, 松本弘*, 大木俊英**, 飯野昭夫**, 藤森正雄*
Authors(kana) :
Organization : *群馬大学第2外科, **県立前橋病院心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 3
Page : 149-157
Year/Month : 1974 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環時の末梢循環不全の防止を目的としてα-BlockerであるPhenoxybenzamine(POB)の体外楯環への応用を試みた. POBの循環動態におよぼす影響について犬を用いて実験的に検討したところ, 動脈圧は多少低下するが, 心拍出量はほとんど変動せず, 末梢血管抵抗は減少して腎血流量は増加する結果が得られた. 開心術後の低心拍出量症候群も一種のcardiogenic shockと思われるので, POBの抗ショック作用について実験的に検討を加えた. microsphere法を用いて臓器血流分布を測定すると, 出血ショックの際には心, 脳, 肝, 小腸, 副腎への血流分布が増加し, 腎, 脾, 膵, 肺への血流分布の減少がみられたが, 体外循環後の血流分布もこれと極めて類似しており, 体外循環という侵襲により生体がショックに近い状態にあることが実証された. この際POBを投与すると増加していた心, 脳, 小腸などへの血流分布が対照に近づく傾向がみられた. また, あらかじめPOBを投与してから体外循環を行なうと, そのような変動が抑制された. ショックの際には細胞内のライソゾーム酵素が血中に遊出するといわれている. 出血ショックの際には明らかに血漿β-glucuronidaseの活性値が上昇したが, あらかじめPOBを投与してから出血ショックにするとβ-glucuronidase活性値の上昇が著明に抑制された. 以上の点よりPOBの抗ショック作用が実証されたので, 体外循環による開心術への応用を試みた. 現在まで48例に用い死亡は3例である. 死亡した3例はVSD+PH, フアロー四徴のそれぞれ1例とVSD+AIの1例である. 教室におけるVSDの治療成績は87例中死亡5例死亡率約6%である. 肺高血圧を伴わないVSDの治療成績はPOB投与群, 対照群とも成績は良好で差がないが, 肺高血圧を伴つたVSDでは投与群の方が成績が良好であつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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