アブストラクト(22巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 実験的肺塞栓症の研究
Subtitle :
Authors : 常山肇, 高橋雅俊
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 3
Page : 176-188
Year/Month : 1974 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : わが国における肺塞栓症の発生頻度は, 欧米に比して極めて少ないが, 近年本症の報告例が散見され増加の傾向にある. acute massive pulmonary embolismは致命的な経過をたどるものも多く, その病態生理の解明や診断技術の向上が望まれる. この意味から自家静脈血栓による実験的肺塞栓症を作成し, 血栓の量的変化による病態生理学的変動を中心にして以下の研究成績を得た. 1. 肺塞栓症作成時の血液凝固系, 線溶系の変化に対しては, thromboelastography, 血小板, fibrinogen, prothrombin time, について検討した. 血栓作成時にはhypercoagulabilityの状態がうかがわれるが, 一定時間も経過すると, 接触因子の活性化が進み線溶系の活性化へ移行する状態が推測された. 2. 肺塞栓症における循環動態の著明な変化は, 右室圧の著明な上昇であり肺塞栓作成のための遊出血栓量1.5ml/kgでは, 右室収縮期圧は, 平均80%の上昇を示した. 血栓量3.0ml/kgでは平均135%の上昇を示した. また, 肺動脈圧, 中心静脈圧, に関しても血栓量と正の相関々係を示して血栓量の増加と共に上昇した. 3. 肺動脈, 大動脈収縮期圧をPA/AO比でみると血栓量1.5ml/kgでは, 術前に比し40%の上昇を示し, 3.0ml/kgでは80%の上昇を示し後者の場合には急性循環不全に移行した. 4. 肺動脈撮影では, 血栓量の量的変化と比例して塞栓部より中枢部の血管径の増大がみられた. 肺動脈主幹部及び肺葉動脈の変化は血栓量3.0ml/kgでは前者は80…100%の増大率を, 後者では80%の増大率を示した. 5. 肺塞栓時の簡便なる補助診断法として, fluorospirographyについて検討した. この診断法は栓塞部位, 程度の判定に有意義であつた. 6. massive pulmonary embolism作成時の各肺葉における病理組織学的所見では, 臨床例にみられる所見とほぼ同様で, 特に肺うつ血像および肺動脈壁より肺胞内への血球濾出像は著明であつた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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