Abstract : |
同種心臓移植は最初の成功例以来, 多くの臨床例が報告されたが, この移植手術が治療法として完成するには未だ解決すべき多くの課題が残されている. すなわち移植手技はほぼ解決されたが大きな課題は移植心臓の入手およびその保存と移植免疫の問題である. 本研究においては移植心臓入手の課題として屍体心臓の蘇生に着目した. すなわち本研究の目的は一定時間anoxiaを経過した心臓に対して冠潅流を行いその蘇生状態を比較検討し, 移植心臓として心機能が維持され収縮力の良好な心臓を得るには, いかなる方法がとられるべきかを解明せんとするものである. 雑種成犬18頭を用い常温1時間のanoxiaの後, 冠潅流を用いて心蘇生を試みた. 潅流方法として摘出心, 心肺標本, 屍体内in situにある心臓の3群各6頭に分け, 常温全血を用いて2時間の冠潅流を行いその心蘇生状態を検討して以下の結果を得た. 1)体内in situにある屍体心臓の心蘇生群は他の2群に比して良好なる心電図所見と, より多い冠血流量と, より低い冠血管抵抗を示した. また心収縮力においても他の2群より良好な成績が認められた. さらに他の2群に比してより多い心筋酸素消費量を示した. しかし摘出心, 心肺標本を用いた心蘇生群の間にはその差は認められなかった. 2)体内in situにある屍体心臓の心蘇生群は他の2群より心筋乳酸摂取を多く認めたが, 焦性ぶどう酸はいづれの群にもその摂取が認められず, 逆にこれを排出することが認められた. また心筋過乳酸値はすべての群で負値を示した. 3)以上の成績について考察を行った結果, 体内in situにある屍体心臓に冠潅流を行うことが, 常温anoxia 1時間後の心臓に対しては, 心臓を摘出した後その蘇生をはかるよりも, よい心蘇生が得られえるとの結論を得た. |