アブストラクト(22巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺高血圧を伴う心室中隔欠損症に対する100%酸素吸入による肺循環動態の変化に関する研究
Subtitle :
Authors : 高原郁夫, 砂田輝武
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 9
Page : 891-903
Year/Month : 1974 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心室中隔欠損症は肺高血圧を伴う代表的疾患で, 肺高血圧を伴つた症例の手術成績はよいとはいえない. 肺高血圧は手術の予後を右左する因子として最も重要な意味をもつが, 左右短絡による肺血流量の増加と, 二次的におこる肺血管床の減少による肺血管抵抗の増大が重要な役割を果している. 肺血管床の減少には肺動脈の器質的閉塞性変化の他に機能的収縮因子が可逆性か不可逆性かを術前に知ることが手術適応および手術予後を予測する上で必要となつてくる. 肺血管の機能的収縮因子を除く目的で, 肺体血圧比0.7以上の肺高血圧を有する心室中隔欠損症の28例に術前, カテーテル検査中に100%酸素の吸入を行い, 肺循環動態の変化をしらべ, 開心術直後に圧測定を行い, 肺循環動態との関係について検討し, つぎの結論をえた. 100%酸素吸入により, 肺動脈圧および肺体血圧比の変化は一定の傾向を示さず, 生存例死亡例との間に有意の差はみられない. 肺体血流量比は100%酸素吸入により殆ど全例増加するが, 生存例では増加の程度が大きく, 全例2.0以上になるが, 死亡例では殆ど増加をみず, 2.0以下にとどまる. 肺体血管抵抗比は100%酸素吸入により全例低下し, 生存例では平均0.15と著明に下降し, 術後は再び上昇して平均0.42となるが, 0.50はこえない. 死亡例では100%酸素吸入によつても0.50以下には下らず, 術後は上昇し0.67と高い値を示した. 手術成績が最も悪く, 手術適応がないとさえいわれている肺体血管抵抗比0.8以上の高抵抗, 低流量群でも100%酸素吸入後, 肺体血管抵抗比0.50以下に下り, 肺体血流量比が2.0以上に増加した例は生存したことにより手術適応がある症例といえる. 高肺血管抵抗を有する心室中隔欠損症に対し, 術前カテーテル検査時に手技的にも時間的にも簡単で, 患者に負担を与えることなく行える利点がある100%酸素吸入を行い, 肺体血管抵抗の変化によつて, 肺血管床の機能的収縮因子が可逆性か不可逆性かを知ることは, 手術適応, ひいては手術予後を知る有力な手段と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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