アブストラクト(22巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 合成網による人工食道の限界
Subtitle :
Authors : 岡本良夫, 帯津良一
Authors(kana) :
Organization : 東京大学分院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 10
Page : 973-983
Year/Month : 1974 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道切除後の再建は患者自身の胃腸管をもつて行われるのが通常であるが, 切除範囲が比較的小さくてすむ適応の場合には, 侵襲の大さから考えて理想的な術式とはいい難い. 人工食道による置換は依然として研究を必要とする課題である. われわれはハイゼックスメッシュの器質化による人工食道について実験的な検討を行つてきたが, イヌ90頭の実験成績を, 補填の長さと耐用期間のそれぞれの限界の点から検討してみて, 興味ある結果をえた. 実験方法は, 食道切除ののち, 上下断端をtube(シリコンハイゼックス管など)と吻合し(内腔挿入型吻合または上端の筋層粘膜間はさみこみ吻合), その外側にmeshをまきつけて食道壁をtubeに密着せしめるとともに, meshの縦のつぎ目をハイゼックス糸で縫合してmeshを管状に成形するものである. 縦隔肋膜は閉鎖する. その不能の場合には有茎生体組織を用いて人工食道の部分を確実に胸腔から分離しておく. 食道とtubeとの吻合がleakageを防止しているのは数日間で, この間にmeshと縦隔組織とが一応の人工食道壁を形成し, 以後meshの器質化, 上皮化が進行する. 最初のleakageの防止には通過抵抗の減少が重要な関係をもち, 内径の大きな薄壁tubeを用いて, 胸部食道の約2/3(イヌで約10cm)の切除が限界であつた. 頚部食道では, はさみこみ吻合が有利であつた. meshの器質化, 上皮化の完成と維持にはmeshが比較的あらく, 糸が細く, 機械的に強いことが重要で, 12meshでは約1年が限界であつたが, 材料の改善によりより長期の維持が示唆された. meshの上皮化の完成のためにはtubeを抜去する必要があつたが, tubeをスプリントとして長期的に残置する場合も検討した. 薄壁tubeの上端をはさみこみ吻合で行うと, 716日までのtube残置5例で著しい狭窄はみられず, 興味ある一法と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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