アブストラクト(22巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 単心室の外科的治療に関する研究 第1報 根治手術成功例
Subtitle :
Authors : 田中孝, 大中正光, 川瀬光彦, 金公一, 石原義紀, 小田部栄助
Authors(kana) :
Organization : 福井心臓血圧センター福井循環器病院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 10
Page : 1006-1018
Year/Month : 1974 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : われわれは, Van Praaghの分類におけるIIA Inversus型単心室で, 肺動脈狭窄, 単心房, 右上大静脈残遺を伴う. 13才男子に対して, 根治手術を行い, 長期生存と, 満足すべき遠隔成績を得ているので報告する. 手術は, ハート型テフロンパッチによる心室中隔形成と, 狭窄除去, 心膜パッチによる心房中隔形成より成り, とくに, 心室中隔形成に際しては, パッチの確実な固定と, 心室腔の適正な分割に主眼をおいた. 完全房室ブロックの発生をみたが, ペースメーカーによる管理で対処した. 術後検査で, 短絡遺残なく, 心内圧も正常化しており, アンギオ像より計測した容積比は, 心房位で, 3対2.5, 心室位で, 3対2~3と, 動脈側が, わずかに大きく, ほゞ適正な配分と考えられた. 術後, 1年9ヵ月を経て, 患者は, ペースメーカーによる心拍数コントロール下にあるが, 元気に学校へ通つており, チアノーゼは消失し, PaO2 84mmHg, SaO2 96%, Hgb(血色素量)14.9g/dlと正常値を示している. 単心室症に対する根治成功例は, 文献上16例を数え, うち, 3例が遠隔死している. 本症の分類, 手術適応, 手術手技等についての詳細な考察は, 第2報に譲り, 本論文では, 16例について, 検討し, 根治手術遂行に当つて注意すべき点, 2つを強調した. 第1は, 術前診断の重要性であり, 第2は, 中隔形成を, 確実にすることが, 遠隔予後を良くする上に重要である点で, 刺激伝導系に関する知見が不確実な現段階では, ペースメーカーの信頼度からみて, 房室ブロックをおそれ過ぎる必要はないと考える. なお, 本症例は, 単心房も合併する, いわゆる二腔心(Cor Biloculare)の世界二番目, 唯一の長期生存, 根治成功例である点も付言した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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