アブストラクト(22巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工気管の研究
Subtitle :
Authors : 山本光伸, 三枝正裕
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 22
Number : 11
Page : 1082-1094
Year/Month : 1974 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 気管の病変を無生物材料をもつて補おうとする, いわゆる人工気管の研究は, 1960年頃より本格的になつたといえるが, 現在もなお決定的なものはない. 著者らは1971年以来expanded polytetrafluoroethyleneのチユーブを人工血管として用い, 良好な成果をあげてきたが, このチユーブのうち, 空隙率が低く, pore sizeの小さいものは, 人工気管としての特質もそなえていると考え, 1972年以来, これを人工気管, または人工気管支として用いる実験を行つた. 実験は総数47頭の雑種成犬を用い, 24頭の主気管支と, 23頭の気管をこのチューブで置換した. 気管支置換群では, 術後の回復期を過ぎ結果を判定できたものは13頭で, このうち3頭の長期生存手術成功例を得た. 気管置換群では, 実験前半の9頭は, 最長生存日数が39日であつたが, 後半に人工気管の逸脱防止の策を講じた14頭のうち, 術後の回復期を過ぎ結果を判定できた12頭の平均生存日数は170日であり, このうち6頭が生存中である. これらの実験の成果を, 他の人工気管のそれと比較して, 具体的に位置づけることはできないが, 新しい素材による人工気管の初期の実験としては, 満足すべき結果と思われる. このチューブの特徴は, 充分な柔軟性を持つこと, 組織反応が少ないこと, 直接針を通して縫合できることであり, この点で他の人工気管に較べ, とくにすぐれているが, 反面, 固定, 感染に弱いため, このままでは人工気管として使用するには, なお難点がある. しかし実験を通じて, 人工気管の持つ問題点が, その必須条件, 手術々式などを含めて, 具体的になつたため, 同時にこの人工気管の改良方針も明らかになり, この方針に基づいて改良を加えれば, 臨床応用可能な人工気管として充分に期待できる材料と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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