Abstract : |
三尖弁置換手術が単独に行われることは特殊な場合を除くと比較的稀である. 教室ではEbstein病1例, Fallot四徴症根治手術後の三尖弁閉鎖不全症1例, 三尖弁に対する弁輪縫縮術後の三尖弁閉鎖不全症1例, 僧帽弁狭窄兼三尖弁閉鎖不全症1例の計4例に対して三尖弁置換を主体とする手術を施行した. Ebstein病に対してはShumway-Angel ringに固定した保存同種大動脈弁を用い, 他の3例に対してはBjork-Shiley弁を用いた. 手術死亡はなく全例とも良好な経過を示した. 後天性三尖弁閉鎖不全の3例はいずれも心房細動を呈し, 1例では心房細動の発現とともに重篤な右心不全に陥り, 重篤な本症においては心房細動が血行動態に重大な影響をおよぼすものと考えられた. 三尖弁閉鎖不全の発生から右心不全症状の発現までの期間は長いものが多く, 3例中2例は約8~10年を要した. 細菌性心内膜炎による本症に対して弁尖切除術を行つた報告もあるが, 一定期間後には重篤な右心不全に陥いることは明らかであり, 後に人工弁を用いることを考慮すべきで, やむをえぬ場合のみに止めるべきであろう. 重篤な本症にあつては弁輪縫縮術は無効な場合が多いと思われ, かかる症例に対しては弁置換手術が必要となり, 弁置換手術により良好な結果が得られる. |