Abstract : |
開心術後のLow output Syndromeに対する治療法の1つとして副腎皮質ステロイドの大量投与が普及しつつあるが, その効果については不明の点が多い, われわれは比較的条件の類似した症例を選び主として血行動態学的検索によりその効果を検討した. 研究対象は体外循環1時間以上に及んだ32例を選びこのうち22例に術直後デキサメサゾン4mg/kgを静注, 他の10例は対照群として投与を行わなかつた. これらの症例について投与前, 投与後30分, 投与後2時間目に検査を施行した. その結果つぎの結論を得た. 1. 血液pH. Base Excessは本剤投与後改善するが, 本剤のみによる効果と断定することはできない. 2. 心内圧は本剤投与後下降しとくに大動脈圧が著明に低下する. 3. 本剤投与による最も著明な効果は循環時間の短縮, 右心肺血液量, 肺血液量の減少, 全身末梢血管抵抗, 全肺血管抵抗の減少に認められ, 本剤は肺循環をも含めた末梢循環の改善に効果を表わすことが確認された. 4. 心拍出量の増加は期待できない. 5. 合併症として皮下出血斑, 消化管出血が見られたがいずれも一過性で致命的なものではなかつた. |