アブストラクト(23巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Aorto-Coronary Bypass Graftに関する実験的研究 Graftの選択および治癒に関する検討
Subtitle :
Authors : 目黒文朗, 砂田輝武
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 2
Page : 172-190
Year/Month : 1975 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血性心疾患に対するaorto-coronary bypass graftはその手術死亡率の低さ, 狭心症軽減効果が著明であることから, 冠動脈直達手術の重要な方法となつてきた. しかしA-C bypassにおいて使用するgraftの変化, 運命, 術直後の流量についての基礎的な研究は少なく, その詳細は不明な点が多い. 著者は雑種成犬にてA-C bypassを作成しこれらの問題を検討した. その結果, A-C bypassにおけるgraft開存のためには, 使用するgraftと吻合する冠動脈との間に外径の不適合を生じないことが必要である. graftの早期における閉塞原因は移植手技によることが多く, その時期は術後2週間以内に起ることが多い. A-C bypass後のgraft流量は, 末梢冠動脈流量の66~100%(平均87.5±12.9%)であつた. このことよりA-C bypassにおいて末梢冠動脈の血流がgraftおよび冠動脈より血流を受ける状態のもとでは, graft依存がより大である. 流量を定常流と仮定して数量的に解析してみると, graft流量を多くしかもgraft内の流速を早くという条件を満たすためには, 冠動脈に対するgraft直径は1.0~1.6倍のgraftを選択することが望ましい. 動脈および静脈をgraftとして用いた例の1年間までの観察では, 静脈graftは動脈瘤様化はみられなかつたが軽度の拡張傾向を認めた. 一方動脈graftは拡張傾向を認めなかつた. graftの組織学的治癒過程は, 動脈graftでは1年経過後でも正常の大腿動脈の構造をよく保つているが, 内膜はアテローム硬化の態度をとる. 一方静脈graftでは初期10日までは内膜, 中膜の変性, 壊死, 炎症性細胞, 円形細胞の浸潤がみられる. 10~20日の間では内膜, 中膜の変性の部は線維細胞, 膠原線維, 平滑筋細胞の出現により初期の血管修復がみられる. 正常静脈では環状方向に筋束が配列するのに対し, graftでは外側より内腔に向う方向に再配列してくる. 1年経過後では内膜肥厚が著明におこり, 初期には断裂していた内弾力板が明瞭にみられるようになり, 中膜には平滑筋細胞の増加がみられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ