アブストラクト(23巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋硬度に関する研究-心筋Viability判定の指標として-
Subtitle :
Authors : 石井信行1),2), 今野草二2)
Authors(kana) :
Organization : 1)東京女子医科大学第一外科学教室, 2)日本心臓血圧研究所外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 3
Page : 227-242
Year/Month : 1975 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠血流の杜絶による乏血状態下の心臓のViabilityに関しては, 単に心移植における提供心のみならず, 広く, 開心術に伴うanoxic cardiac arrest下の心臓や, ひいては心筋硬塞の乏血部位の問題として重要であり, 従来より, 生理学, 生化学および形態学的な各面からの研究がある. しかし, そのViability判定の指標は, 現在, 確実なものはない. 一応, 一般的には, 一定温度における乏血状態許容の時間として表現されているが, これもすべての心臓に普遍性を持つものではない. 乏血状態下に心臓は非常に硬くなり, 蘇生不能となることがある. これは乏血状態の時間に比例せず, あるものは早く, あるものは長い時間を要する. これは, 最近のCooleyらの報告や, また, 心移植実験における提供心にても従来より経験的に知られている. では, 乏血状態下の心臓の硬さは, その心のViability判定の指標となり得ないか. この疑問のもとに, 実験を試み, 以下の結論を得た. 雑種成犬21頭を用いた. 乏血状態下の心臓は次第に硬くなって行くが, その生じ方(生じ始め, 経過および程度)は, すべての心臓に一定してはいなかった. すなわち, 個々の心臓により異り, 早く硬くなるもの, 遅く硬くなるものがある. 塚原の筋硬度計(日常, 臨床に用いられる血圧計により較正した)を用いて乏血状態下の心臓の硬さを測定したところ, 蘇生時, 左室心尖部からそれに近い左室自由壁の硬度が150cycle/sec前後以上のものは蘇生不能であった. 硬度がそれより小さいもの(より軟いもの)は蘇生可能であり, 蘇生後の心機能(ポンプ能および収縮能)は, 蘇生時の硬度が大きいほど(硬いほど)指数関数的に減少した. 乏血状態下の心筋硬度は, その心臓がsurvivalか否かを, またsurvivalなものに関しては, その心機能を推定することができ, 従って, 心臓のViabilityを判定する1つの指標となり得るものと思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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