Abstract : |
教室試作の心拍同期補助循環装置を用い, 胸部大動脈バルーン・パンピング法の補助効果を左室機能および冠血流を中心に検討した. 実験の対象は, 心機能の良好な正常犬および左冠動脈二次分枝の連続二重結紮により作製した虚血不全心を対象とした. バルーンパンピング(IABP)により, 左室収縮期圧に平均10%の下降を認め, 左室駆出抵抗の軽減の結果, 左心拍出量は, 正常心で, 平均3.1%, 虚血不全心で, 平均8.2%におよぶ有意な増加を示した. この左心拍出量と平均左室抵抗の変動の間に良好な逆相関(γ=-0.85, p<0.01)を認め, 正常心および虚血不全心に, それぞれy=-0.29x-0.22, y=-0.59x-1.13(y軸に左心拍出量, x軸に左室平均抵抗をとった)の回帰直線が得られた. この事実は, 虚血不全心で, 左心のExternal performanceが, より高度に増強されている事を示す. 一方, 本法による左室の拡張期減圧効果も, 平均左室抵抗の変動と良く相関し, 虚血不全心で, より顕著に認めた. IABPの左心拍出増強効果は, 著者らの検討では, 心筋収縮性に有意な変化を認めず, 左室拡張終期圧の下降と同時に認められる事から, 左室ejection fractionの増大に基因すると考えられた. 本法の冠循環に対する効果は, 虚血不全心に絶対的な冠血流の増加を認め, 拡張期動脈圧の上昇程度と高度に相関を示した(γ=0.985, p<0.01). 低心拍出の強い心原性ショックの治療に際し, IABPによる“systolic load”の軽減が, 同時に低心拍出の回復をもたらし, 冠循環の改善と相まって, 本法における左室unloadingの意義は大と結論される. |