アブストラクト(23巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 不全心に対する補助循環法に関する実験的研究-とくに大動脈バルーンパンピング法について-
Subtitle :
Authors : 松倉裕美
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 3
Page : 279-296
Year/Month : 1975 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 雑種成犬27頭を用い, 正常心および実験的虚血心にたいし大動脈バルーンパンピング(IABP)を2時間施行し, その補助効果と回復効果を主として血行動態と心筋代謝の面から検討した. 正常心においてはIABPにより左室後負荷は減少し, 大動脈血流加速と左室から大動脈へ血液を引きだすことにより大動脈血流量は増加するが, 左室拡張終期圧は変化せず, 冠血流量はautoregulationのため有意の変化をしめさなかった. 虚血心においてはIABPにより大動脈拡張期圧は17~21%上昇し, 大動脈血流量は27~36%増加した. 冠血流量はIABP施行90分値で26.4%と有意の増加をしめした, IABPは正常心よりも虚血心においてより大きい補助効果をしめし, 虚血心において得られた回復効果はIABP終了後も維持された. 心筋代謝の面からみるとIABPは虚血心における冠動静脈血乳酸較差, ΔEh, ΔXL, 心筋酸素摂取率をすべて嫌気性代謝から好気性代謝へ回復させ, IABPにより心筋細胞レベルでの機能回復が考えられた. また摘出心の冠動脈造影で結紮部より末梢側の冠動脈に逆行性に造影剤の流入を認めた. すなわちIABPは左室後負荷の軽減により酸素需要を減少させ, 一方で冠血流量の増加により虚血心筋部の還流血液量を増加させることにより酸素供給を増加させて, 心筋代謝および心機能の改善をおこなうものであると考えられた. IABPによる分時溶血量は平均0.086mg/dlにとどまった, IABPの末梢循環におよぼす影響は極めて少なく, 本法の施行は技術的に容易であり, 手術侵襲も少ない.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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