アブストラクト(23巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 自然気胸例におけるガス交換異常の特殊性 ―とくに動脈血O2飽和度と虚脱肺容積との関連について―
Subtitle : 原著
Authors : 宮本洋寿*1, 井村价雄*2, 阮秋栄*2, 町田和子*2, 加藤紀久*2, 塩沢正俊*2, 渡部哲也*3
Authors(kana) :
Organization : *1東京大学医科学研究所外科, *2結核予防会結核研究所付属療養所, *3虎ノ門病院循環器科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 7
Page : 875-882
Year/Month : 1975 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1971年6月から1973年5月までに自然気胸で入院し, 胸部X線所見, 換気機能所見, 動脈血ガス所見を7ヵ月ないし12ヵ月の間隔で最長20ヵ月間追及しえた27例(男25例, 女2例)を研究対象とした. このなかには慢性閉塞性肺疾患2例, 手術によってbulla, blebを認めた7例が含まれる. これらの症例を対象にしてガス交換の特殊性ことに動脈血O2飽和度と虚脱肺容積との関連性を追及した. X線写真上で虚脱肺の容積比(ΔTLC)を求め, これによって症例を3群(ΔTLC≦15%, 15<ΔTLC≦30, ΔTLC>30)に分けた. 各群の症例について動脈血O2飽和度, 換気諸量, 残気量, 肺胞気O2濃度, 肺胞気O2分圧, 不均等換気, N2洗い出し遅延率, 解剖学的短絡率, 生理学的静脈混合率などを求めた. 自然気胸による肺虚脱度に応じて動脈血O2分圧は低下したが, この際肺胞気の不均等化増大はみられず, 解剖学的短絡率の上昇を認めた. しかし慢性閉塞性肺疾患例では解剖学的短絡率よりも“virtual”shuntの上昇度が著しく, 低O2血症の程度が強かった. 解剖学的短絡率の上昇は虚脱肺の部分的肺胞換気の遮断域に肺血流が残るためと考えられた. 一方虚脱肺への血流を減じ, 健康肺部へ回る血流の再分布という合目的的の機構が伺えた. 閉塞性換気障害例あるいは高度の拘束性換気障害例では換気不良部の換気/血流(VA2/Q2)を著しく低下させるため“virtual”shuntの上昇を招くものと考えられた. かかる肺血流の再分布は気胸側の胸腔内圧に大きく依存し, 陽圧に傾くとき患側への血流抑制が強まるものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
このページの一番上へ