アブストラクト(23巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術による心筋虚血の問題とその対策 ―とくに電顕所見を基礎として―
Subtitle : 原著
Authors : 鈴木一郎, 綿貫重雄
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 7
Page : 883-893
Year/Month : 1975 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺下開心術中, とくにチアノーゼ性心疾患において, 術直後からの低血圧症例が多発し, 時に不幸な転帰をとる場合がある. そこでこの原因の解明と対策について検討した. すなわち, まず第1に, 術直後からの低血圧症例が, とくにチアノーゼ性心疾患に多発することから, これら心疾患の心筋は, 他のチアノーゼを有しない軽症例とは異なり, 何らかの特有の所見を有するのではないかと考えた. そして, 開心術中に, 右室心筋を採取し, 電顕にて観察した. つぎに従来の間歇的冠潅流法が, 心筋庇護の面で充分であるかどうかを, 犬を用い実験的に検討した. その結果, フアロー四徴症を中心とするチアノーゼ性心疾患の心筋は, 心筋線維間に差異が認められ, 弱拡大の観察では, 同一視野に内容の充実した心筋線維と, 内容の粗な心筋線維が認められる. 内容の粗な心筋線維では, 筋原線維は細く, 断片的であり, ミトコンドリアの膨化等が認められる. また一部の症例では, 筋原線維の無構造化や, 錯綜配列が認められる. これらの変化の認められる心筋では予備力の低下が窺われ, このことが術後早期の低血圧症の一因と考えられる. また冠潅流法に関しては, 従来行ってきた電気細動下10分間隔の間歇的冠潅流法では, 30分頃から犬心筋に阻血性変化が認められ, 60分後では, ミトコンドリアの膨化, クリスタの乱れ, マトリックスの透明化, グリコーゲン顆粒の消失, 核質の集塊化などの著明な変化が認められる. すなわち, この方法は心筋庇護の面では, 適切な方法とはいえない. そこで1回の冠潅流遮断時間を5分間とした, 5分間隔法を試みた. その結果, 60分後でも犬心筋の変化は軽微である. 以上のことから, チアノーゼ性心疾患の開心術では, 術中の阻血負荷は最少限に留めるべきであると考え, 現在では5分間隔の冠潅流法を行っている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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