Authors : |
岡村健二, 弓削一郎, 入山正, 川副浩平, 黒沢博身, 北村信夫, 今村栄三郎, 関口守衛, 小柳仁, 今野草二 |
Abstract : |
生体弁材料として広く用いられている大動脈弁は肺動脈弁にくらべ弁尖が厚く丈夫である利点をもつ反面, 低圧系の肺動脈弁位に移植すると大動脈壁や弁尖の石灰化, 萎縮や弁輪部における残存筋肉組織の線維性収縮をおこすことが報告されている. そこで本研究ではメタ過沃素酸ソーダとglutaraldehydeで処理した異種大動脈弁を雑種成犬における低圧系の三尖弁位および肺動脈弁位に移植し, 三尖弁位で最長183日, 肺動脈弁位で270日までの追跡期間における組織学的, 血行動態的観察を行った. 肉眼的には少数例において弁尖交連部の萎縮がみられたが, 大部分において可動性は良好であり弁穿孔や断裂像はみられなかった. 組織学的観察において, 弁尖における細胞構築像は時間の経過とともにやや細胞核数の減少がみられるものの弾性線維とともに比較的良好に保たれていた. 膠原線維は, ことに弁尖のバルサルバ洞面部において経過とともに硝子化傾向がみられ, 電顕像において線維束の乱れや境界の不明瞭化, 周期性横紋の消失が認められた. この変化は肺動脈弁位移植例よりも三尖弁位移植例においてより早期におこっていた. 石灰化は大動脈壁や弁輪部にはみられなかったが, 三尖弁位移植41日犬の一弁尖内に認められた. 血栓形成は肺動脈弁位移植例には全例みられなかったが, 三尖弁位移植例には高頻度に認められ, メタ過沃素酸ソーダとglutaraldehydeによる処理により低下した弁尖の柔軟性との相関が疑われた. 血行動態的観察では三尖弁位183日, 肺動脈弁位270日生存犬の心血管造影, 心内圧測定検査においてともに良好な弁機能が確められた. |