アブストラクト(23巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 遷延性術後低酸素血症に関する臨床的研究
Subtitle :
Authors : 田中弘一
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部肺癌研究施設第一臨床研究部門
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 8
Page : 945-957
Year/Month : 1975 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺切除術後の低酸素血症についてのこれまでの報告では, 大多数が術後2週目までに改善されるといわれていた. また, その生理学的原因としては, 換気血流比の不均等分布, 無気肺, 心拍出量と酸素消費量の不均衡が考えられている. 著者は各種気管支肺疾患を有する入院症例305例(うち手術例220例)について, そのPaO2を主体とした検討を行い以下の結論を得た. 1)術前PaO2と年令は負の相関を示し, その平均値の95%信頼限界はPaO2=83.3-0.26×年令で, この回帰式より得られる値を基準とし, 術後それ以下の値を示す症例を術後低酸素血症として取扱つた. 2)術後経時的にPaO2の変動を検討し, 1週目において基準値に回復した症例をA型, 2週目において回復した症例をB型, 2週目の時点でなお基準値に回復していない症例をC型(遷延性低酸素血症とよぶ)と分類した. C型は全体の34%を占めており, 遷延性低酸素血症がまれでないことがわかつた. 3)A型症例の年令は37±17歳, そのFEV1.0%は77±9%でB, C型と有意の差が認められた. 自然気胸はA型を示すものが多く, 肺癌及び縦隔に対する侵襲の大きな縦隔腫瘍はC型を示すものが多かつた. 4)遷延性低酸素血症について, 年令, %VC, FEV1.0%, 手術時間, 手術々式は統計学的に有意な関係が無かつた. 5)術後低酸素血症の原因については, 時期的にその主因が異つていると考えられた. そして遷延性低酸素血症の原因としては, 残存肺に起る術後変化, すなわち, 気管支分泌物の貯溜, 血液凝固塊等による気道閉塞および気道の虚脱性の増加による換気不全部分(いわゆる無気肺も含めて)の存在が主因となつているものと考えられた. 6)遷延性低酸素血症を予知する方法を検討した結果, 術後3日目におけるtrue shuntが14%(または, 100%O2呼吸時のA-aDo2が240mmHg以上)がcritical valueで, これ以上の値を示すものはC型をとりやすく, 積極的な呼吸管理の対象になるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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