アブストラクト(23巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 自家血による開心術
Subtitle :
Authors : 岩喬*, 土屋和弘*, 河北公孝*, 永井晃*, 坂東健*, 申東奎*, 関雅博*, 上山武史*, 村上誠一**
Authors(kana) :
Organization : *金沢大学医学部第1外科学教室, **金沢大学医学部麻酔学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 9
Page : 1099-1106
Year/Month : 1975 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心臓外科の発展により年々開心術症例は増加している. しかし開心術の基本的補助手段として人工心肺装置を使用する体外循環法には, 従来多量の同種血を必要とし, 同種血輸血により, 術中, 術後多くの合併症および不利益がもたらされ, 大きな問題であつた. 体外循環法のこの20年間の歴史において, 血液稀釈体外循環法と人工肺の簡易化, 小容量化が研究され, 多大の進歩を来した事は良く知られた所である. そこで, われわれは今度患者の血液を術前脱血し, 稀釈体外循環法を施行し, 人工心肺操作終了後還血し, 自家血のみの開心術を行い, その血液学的, 血清化学的, 血行動態的面より検討し, 本法が安全かつ有用な方法である事を確認したのでここに報告する. 症例は体重45kg以上の成人開心術症例19例を対象とした. 脱血法は, 1)手術前1~3日前に計600~1000ml脱血した8症例, 2)体外循環直前に800ml脱血した6例, 3)手術前7日~28日前に1回450ml×2計900ml脱血し, -80℃冷凍保存した5症例, 以上の3方法である. 還血法は体外循環終了後6時間内に還血した. 常温下稀釈体外循環法(稀釈率20~36%, Ht20~34%)を施行し, 同種血使用体外循環症例8例を対照群として, 比較した. 自家血群と同種血対照群では血液ガス, 溶血度, 電解質, 血清蛋白, L.D.H.などでは差を示さなかつたが, 術後の血圧変動, 尿排泄量, 術後出血量を比較すると自家血群の方が生体にとつてより有利な状態が生じていることが分つた. また同種血群の使用輸血量は平均1330mlに対して, 自家血群は同種血輸血追加を必要としたのは4例(平均600ml)のみであつた. 他の13例は全く他からの輸血を行わなかつた. 以上の如く, 術前脱血, 術後還血による自家血のみの体外循環法は, 安全でかつ有利な方法であり, 血液学的, 循環動態的のみならず, 術後の合併症, 免疫学的諸問題を凝固機能などの面において臨床上の意義は大なるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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