アブストラクト(23巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 右室流出路形成における同種大動脈移植片の運命 ―石灰沈着および骨形成について―
Subtitle : 原著
Authors : 伊藤保憲, 砂田輝武
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医部学第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 12
Page : 1377-1390
Year/Month : 1975 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 右室流出路形成に使用されうる材質のうち, 現在のところ同種大動脈が最も優れていると思われる. すなわち, 術後にみられる中膜の石灰沈着以外に, 重篤な合併症をみないためである. 本研究では, イヌを用い, 石灰沈着を抑制あるいは促進したといわれる方法で同種大動脈を処理し, 左肺動脈に移植し, その長期移植片の組織学的検索を行い, 下記の知見を得た. (1) 石灰沈着抑制効果あるいは促進効果はみられなかった. (2) 石灰沈着発現様式には, 塊状石灰沈着様式と線維状石灰沈着様式の2形式があった. (3) 中膜には, 退行変性のみならず, 生命現象を営む細胞集団がみられた. すなわち, 骨形成像と間葉系細胞, および栄養血管の増生である. (4) 骨形成像にも2様あり, 石灰沈着部分に直接骨梁様構造物が生じる様式と, 軟骨内化骨の形で骨形成をみる様式とである. (5) 中膜の間葉系細胞および新生血管の増生が, 移植片由来か, 宿主由来かは本研究では確認できなかった. しかし, 移植片内に生命現象を営む組織の内存は確かにある. もし移植片由来であれば, 移植片に対する拒絶反応は軽微であるといえる. 一方, 移植片にみられた間葉系組織は, 軟骨組織および骨組織に分化しうると推測される. すなわち, 移植片に内在する生細胞は, “異常誘導”され, 石灰沈着, さらに骨形成の段階へと進むものと思われる. (6) したがって, 移植片での軟骨および骨形成が, 間葉系組織からの“異常誘導”であるならば, 移植片の, 採取から保存までの諸条件を, 移植片にとって, より好環境(培養液および培養方法)とすれば, これらの間葉系組織が, 移植片本来の支持組織に分化し, 長く宿主の中でその機能を果たし得るであろうと期待できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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