アブストラクト(23巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超急性肺拒絶反応
Subtitle : 原著
Authors : 草島勝之, 長谷川恒彦, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 12
Page : 1412-1420
Year/Month : 1975 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1963年以来, 今日までに施行されてきた肺移植症例は34例であるが, その成績はほかの臓器に比べて, 極めて悪く, 複雑な拒絶反応がその原因の1つにあげられている. この拒絶反応の病態生理を解明すべく, 箸者らは, カラーの顕微鏡映画により, 犬-猫間異種および犬-犬間同種における肺拒絶反応を連続的に観察するとともに, 大量ヘパリン, または大量ステロイドの前投与による拒絶反応への影響を, 顕微鏡映画・肉眼的および組織学的観察, およびインドインク注入による血流分布状態などを比較検討した. 顕微鏡映画による観察で, 犬-猫間異種グラフトは循環開始後1~2分で, 毛細血管血流の低下, 血液泥化現象を示し, 15分では完全に毛細血管・細動脈の血流は停止した. 猫肺は血球凝集・うっ血・血管周囲への細胞浸潤, 間質性および肺胞性浮腫を示した. 循環停止後, インクを肺動脈から注入すると, 肺は網状に染まり, 血流分布の不均等なことを示した. 大量ヘパリン前投与異種グラフトでは, 血流は対照群と比較して, 長時間保たれたが, 組織反応は同程度に出現した. 大量ステロイド前投与異種グラフトでは, 血流もよく保たれ, 組織反応も軽度であったが, 90分後では対照群と同様の変化を示した. 異種グラフトの機能を検討すべく, 剔出猫肺を犬静脈血で, 生理的肺動脈圧にて潅流せしめると, 血流は5分で41%, 15分で15%に減少した. 肺血管抵抗は, 15分で7倍に上昇した. 肺コンプライアンスは, 15分でわずかに83%に減少した. 肺静脈からの血液ガス分析では, 15分経過後も正常範囲に保たれていた. 以上の実験結果から, 異種間の肺拒絶反応は極めて急激, 激烈であり, この主な病態像は, 血球凝集による毛細血管・細動脈の閉鎖であり, ステロイドは一時的であるが, 肺血管床を保護し, 拒絶反応を和らげる効果があった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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