アブストラクト(23巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 1側荒蕪肺における気管支, 肺循環系血流動態-肺性肺高血圧症の発現における気管支循環系血流の関与について-
Subtitle :
Authors : 香川輝正, 小谷澄夫, 板野竜光, 野々山明, 中橋正明, 増田与, 中路忠司, 笠原憲二, 茂幾俊武
Authors(kana) :
Organization : 関西医科大学胸部外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 4
Page : 412-422
Year/Month : 1975 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 正常および病的状態における気管支, 肺循環系血流関係については, すでに1950年度の半ばにおいて諸家によりその概貌が明らかにされている. しかし当時の研究ではin vivoでの血流動態の追求はなされておらず, 肺血行力学面の評価にも意を尽しえていない憾みがある. 著者らは肺結核および特発性気管支拡張症に起因する1側荒蕪肺6例について, 気管支, 肺血管造影, 右心カテ法等の綜合的施行により, 気管支, 肺循環系血流動態と, 肺循環系血行力学におよぼすその影響を検討し, さらに切除肺の病理所見と血行力学的所見との関連を比較考察した. 1側荒蕪肺において患側肺動脈の順行性血流は停止ないし著減し, 気管支動脈血流は逆に増加するが, 両循環系間の血流関係には2つの異なつたパターンがみられる. その1つ(A型)は気管支動脈血流は豊富な毛細管網を経て肺静脈, 左心房に流入するもの, 他の1つ(B型)は末梢気管支血管床は閉塞状態を呈し, 血流は比較的中枢側に発達した側副血行路を経て肺動脈に流入, これを逆流して対側肺動脈に至るものである, こうしたパターンの決定因子は肺内病変の病期にあり, 炎症が急性期にある時はA型を呈し, その慢性化と線維化の進行にともない, 漸次B型に移行するものとみなしえ, 両者は一連の関係にあるものと考えられる. 肺血行力学的にはA型は左-左短絡を形成して左心負荷, 静脈血混合の増大を, B型は左-右短絡により肺高血圧症, 肺性心への進展をみちびく. B型の左-右短絡量は絶対値として大量でなくとも, 肺血管床容積の減少が前提とされるので, 相対的には倍量以上の負荷となり, 加令その他の要因による対側肺血管抵抗の自然増を考慮すれば, 肺高血圧症の促進因子として無視しえない. 患側肺剔除にはこうした血行力学的負荷の軽減効果を期待しえ, 自験例中肺高血圧症を呈した3例において術後その機能的改善を実証することができた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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