アブストラクト(23巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環法による乳幼児心室中隔欠損症の根治手術
Subtitle :
Authors : 田中孝, 川瀬光彦, 大中正光, 金公一, 小田部栄助, 石原義紀
Authors(kana) :
Organization : 福井心臓血圧センター福井循環器病院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 23
Number : 4
Page : 423-433
Year/Month : 1975 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺による体外循環法を用い, 乳幼児心室中隔欠損症(VSD)28例に, 根治手術を行い, 死亡1, 死亡率3.6%の成績を得た. 12ヵ月未満の9例は, 全例生存した. 術前の右心カテーテル検査で, 全例に肺高血圧症が認められ, 肺対体血管抵抗比(Rp/Rs), 肺対体収縮期血圧比(Pp/Ps)および, 短絡率の相互関係から, 対象となつた症例の重症度を分析した. Rp/Rs45%から, 87%に急速に肺高血圧が進行した1症例があり, 本例は, 救命できなかつた. 本例は, 肺血管病変の進行の早さに対して, 警告を与えるものである. われわれは, 軽度低体温併用体外循環法を, 年長者同様, 乳幼児にも, 終始一貫用いている. 直腸温28℃では, 60分の大動脈遮断が可能であり, VSDの閉鎖は, 1回の遮断のみで, 安全, 容易に遂行できた. 全循環遮断は, 有害と考え行つていない. 術後呼吸管理では, 28例中25例(89%)が24時間以内に, 抜管, 自発呼吸に戻つており, 長時間人工呼吸など, 高度の呼吸管理を要したものは, 3例であつた. 術後遠隔成績についつは, 十分な結果を得ていないが, 全例Pp/Psは著明に低下しRp/Rsも, 測定しえた症例の多くが, 正常値に復帰している. しかし, なお, 長期追跡が必要である. 考按では, とくに, 乳児期手術の適応の問題を, VSDの自然歴と, 手術成績を参考に, 現況の最良の対策を論じた. また, 開心術の補助手段について, 体外循環法を用いる立場から全循環遮断を行う超低体温法との比較を行つた. 結論として, 現在では, 6ヵ月末満の重症VSDで, 手術を必要とするものには, 肺動脈Bandingを行い, 6ヵ月以降は, すべて, 体外循環法による, 一期的根治手術を行い, 満足すべき成績を得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords :
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